人生最後の勝負じゃない 日本ハム監督・栗山英樹さん
これから僕が話すことが合っているか間違っているかではなく、誰か一人でも参考にしてくれたら幸せです。
ヤクルトでのプロ2年目に突然、激しいめまいに襲われるメニエール病を患いました。病室での母の言葉が忘れられない。「私が代わってあげたい。私がなればこの子が野球ができるのに」。僕が眠っていると思ったのでしょう。嫌な思いをさせて申し訳なかった。絶対に治してやると思った。どれだけ野球が僕にとって大事か、捨てたら僕が終わっちゃうとも思った。結局、5年後に引退。でも、明らかに野球に対する思いは変わったんです。当たり前にあった野球、普通の生活が何なのかと。
創価高校で投手でした。3年夏は西東京大会で敗退。東京六大学リーグでやりたかったけど教員を目指して東京学芸大に。でもやっぱり上のレベルで勝負がしたい。思いがどんどん積み重なって、プロの入団テストを受験。時間があれば練習したし、あらゆる人にお願いした。運良く入団できた。できることをやり尽くせば、その姿に対して、思いに対して、誰かが気づいてくれると思えた。
甲子園がなくなったいま、どういう言葉をかけても、純粋にがんばってきた君たちに「納得して」とは誰も言えない。ただ、この夏が君たちにとって人生の最後の勝負じゃないでしょ? 最初の勝負でしょ? 人は大きなきっかけで「覚悟」や「志」というものが生まれると思っています。大きくなってください。(聞き手・坂名信行)
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〈くりやま・ひでき〉 現役引退後はスポーツキャスターとして高校野球も長く取材。北海道栗山町に少年野球場「栗の樹ファーム」を造り、野球発展に尽力する。
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