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 新型コロナウイルスへの対応から休校していた学校が25日、本格的に動き出した。小学校では机の間を空け、高校では分散登校を取り入れるなど各校、模索しながらのスタートとなった。

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 県立高校90校で25日、一斉に授業を再開した。県教育委員会は通学時のラッシュを避けるため、生徒の1割以上が公共交通機関を利用する学校に、実情に応じて最大60分の幅を持たせた分散登校を要請した。

 約4分の1が鉄道やバスで通う県立静岡高校は、始業時間を10分早め、午前8時にした。1校時を65分から50分に短縮し、午後2時下校とした。来週以降、運用を見直すという。

 3割強が公共交通を使う県立浜松北高校では始業時間を30分繰り下げた。生徒は各自、午前7時~8時50分の混まない時間帯を選んで登校。今週は放課後に面談の時間を取るため、1校時を10分短縮して40分とした。

 特別支援学校では、規模が大きい27カ所で分散登校。児童・生徒は週2~3回の隔日登校となった。

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 静岡市の市立学校でも25日、授業が再開した。児童生徒たちの登校は4月10日以来で、校内に活気が戻り始めた。一方で、授業内容の見直しや行事の取りやめを余儀なくされるなど、課題を抱えたままの再スタートとなった。

 葵区の葵小学校(児童数654人)では、クラスメートと久々に顔を合わせた子どもたちが、マスク越しに互いに笑顔を見せていた。6年生の松本侑也さん(11)は「授業を受けてほっとしています。自宅学習では分からないこともあるので」と話していた。

 文部科学省の指針に基づき、机の間隔は1メートルほど空けて配置。今週末の運動会は中止した。授業時間の確保のため社会科見学もDVD鑑賞に切り替え。「3密」回避へ体育や音楽の授業では当面、サッカーや合唱を取りやめる。

 休校期間は実に44日間に及んだ。児童からは「友だちができない」との声も出たという。この日は13人が病欠し、うち1人は「コロナ禍の不安」が理由だった。2年生の女児と一緒に学校に来た父親(49)も「集団生活で感染が心配な部分はまだあります」。

 このほか、先生や友だちの顔がマスクでよく分からないとの声もあった。川島広己校長は「教師にはフェースシールドの着用も検討したい」と話していた。(中村純)

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 再開後の学校教育の留意点について、静岡大の亘理陽一准教授(教育学)に聞いた。

 ――学校が再開されます。どんなことに注意が必要ですか。

 「学習の遅れを取り戻すことが優先されると、子どもたちの心身に悪影響を及ぼしかねない。すでに夏休み、冬休みの短縮や土曜授業の実施が言われているが、カリキュラムをそのまま無理やり詰め込むより、深く学べる内容を精査し、再編する必要がある。特に中3、高3は、入試の出題範囲を2年生までの学習内容を中心にするなどして、救済を急ぐべきだ」

 ――友達や先生としゃべらない、触れあえない。従来の学校教育と「3密」原則は相反するところが多そうです。

 「しゃべるな、触るなというのが長期的に見て教育活動としてのぞましい形なのかを考える必要がある。たとえば給食。教室に閉じ込め、監視され、前を向いて、黙って、短時間で食べろというのは子どもの人権への意識が低すぎる。個包装なら持ち出して校庭や屋上で食べてもいい。机に透明なついたてを立て、おしゃべりしながら食べたらいい。休み時間に友達と遊ぶなど、子どもが求めることをかなえる工夫に、知恵と予算を使って欲しい。大人の都合で理不尽を押しつけるべきではない」

 ――授業のあり方も変わりますか。

 「分散登校や少人数学習を進めるには教員を増やす必要がある。それができないのであれば、一部分は動画教材を複数クラス・複数教員で共有するなど、機動的な対応が必要になる。そのための機材や環境は国と自治体が用意すべきだろう」

 ――新入生への対応で気をつけること。

 「学校では、友達から学習の助けが得られる。友達関係は学習のためだけのものではないが、休校期間中、1人で課題と向き合ってきた1年生も多いだろう。再開して、いきなり学校や友達のペースに自分を合わせる必要が生じるとストレスも高まる。できるだけ一人ひとりに時間をかけて、教員が丁寧に学習や人間関係に目を配る必要がある」

 ――コロナ後の学校に望むことは何ですか。

 「『教室での一斉授業』『受験合格がゴール』というこれまでの目標を考え直そう。一番必要なことは子どもに『孤独じゃないよ』と伝えること。休校期間中に広がったオンライン、オンデマンド教育が個々の子どもの声を拾っていたかを検証し、本当に困っている子どもたちの学習意欲や探究心を喚起する教育の提供を目指してほしい」(阿久沢悦子)