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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国の緊急事態宣言が25日、全面解除され、埼玉県も外出自粛や休業要請の一部を解除した。観光に携わる人たちや飲食店主らは一日も早く「日常」が戻ることを願うが、感染拡大の「第2波」への警戒は続けられる。

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 緊急事態宣言の解除に、観光や飲食店関係者からは歓迎の声が上がった。

 3月下旬から臨時休園していた宮代町の東武動物公園は準備が整い次第、営業再開する方針だ。飼育課長の下康浩さん(60)は「休園でも飼育に休みはない。気を抜くことなく健康状態を保って、再開の日を迎えようという思いだった。元気な動物たちと飼育係でお客様を迎え、笑顔になってもらえたら」と話した。

 秩父地方では緊急事態宣言以来、西武鉄道も秩父鉄道も運行本数を減らし、西武秩父駅に隣接する複合施設「祭の湯」や観光案内所「秩父観光情報館」も休館した。秩父観光協会秩父支部の大谷幾勇・専務理事は「今後は来る方も迎える側も安全で安心できる状態で、にぎわいを取り戻したい」と期待を込めた。

 さいたま市浦和区のJR浦和駅近くにある「バー レベルストック」の天沼啓吾店長(36)は「バーはテイクアウトができないので厳しかった。5月中は解除されないと思っていたので、ひとまずよかった」と胸をなで下ろした。

 同店は、緊急事態宣言後は1カ月間休業し、大型連休後はお酒の提供は午後7時までに自粛し、細々と営業を続けてきた。「3密を避けようと、客数も半分に限定したこともあり、売り上げはいつもの1、2割程度に落ち込んだ」という。「自治体の補助制度は申請してもまだお金は入ってこない。第2波がくる不安もあるが、一日も早く深夜営業ができる日常が戻ってきてくれないと困る」と話した。

 川越市の蔵の街「一番街」では100店余りのうち8割ほどが店を閉めているが、25日には翌日から営業を再開しようと商品の搬入などを始める店も。川越一番街商業協同組合の藤井清隆理事長(47)によると、他にも「来週末から再開」「6月の様子を見てから」など店によって対応は様々という。

 「ねこまんま焼(やき)おにぎり」が人気で混雑していた乾物店「中市本店」は、おにぎりの販売をやめて営業を続けていた。店主の落合康信さん(50)は急に客足はもどらないだろうとみる。悩ましいのが、おにぎりの再開時期。「人が密になる行列は、まだまずいと思う。でもお客さんには来てほしい。ジレンマです」

 川越は、東京五輪のゴルフ競技の会場だったが、新型コロナの影響で延期された。「各店とも最高の売り上げを見込んでいたが、最悪になってしまった」(藤井理事長)というダブルパンチに見舞われている。

 組合では、組合員の酒店から寄贈されたアルコール除菌液を全店頭向けに配布するほか、お客の行列が密にならないように求めるガイドラインを作成することにしている。藤井理事長は、「感染第2波も心配だが、商店街をあげて感染防止に取り組んでいるところを見せたい」と意気込む。(加藤真太郎、原裕司、進藤健一)

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 小中学生3人の男の子がいる熊谷市の主婦、増田陽子さん(46)は「熊谷市では1カ月以上、新規感染者ゼロが続いているので学校を再開しても大丈夫かなと思う」と話す一方で、「いきなり一斉登校、通常授業は不安。様子を見ながら『普通』に戻していってほしい」と複雑な心の内を語った。臨時休校となった約3カ月、息子たちはあまり勉強はせず、ゲームや将棋をやっている時間が長かった。休校中の昼食づくりが大変で「専門家が考えるバランスのいい給食はつくづくありがたいと思った」。

 緊急事態宣言で広がったテレワークを歓迎する声もある。JR大宮駅を使って都内の証券会社に通勤する男性(33)は「上司やチーム間での報告義務が面倒だが、営業の効率が良くなった面もある」。解除後も5月中は在宅勤務のままだといい、勤務先はコロナ禍を機にテレワークをさらに積極的に取り入れていく方針だという。(坂井俊彦、黒田早織)

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 埼玉県は25日夜、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた休業要請について、スポーツジムやナイトクラブなど一部の業種を除き、同日夜をもって解除することを決めた。独自に設けた要請解除・緩和の目安を満たしたとして、新型コロナの対策本部会議で決めた。外出自粛については、県内観光や買い物、家族での外食を除き、県外への不要不急の移動や夜の繁華街への外出は控えるよう求めた。

 大野元裕知事は同日夜、さいたま市内で開かれた対策本部会議で「宣言は解除されたが、新型コロナウイルスの脅威がすべてなくなったわけでなく、しばらくはこのウイルスとの共存を余儀なくされる。今後は感染拡大の防止と社会経済活動の両立が図られるようステージを変えていかなければならない」と述べた。

 休業要請を解除したのは、学習塾や自動車学校(床面積1千平方メートル超)、映画館、集会場、パチンコ店など、クラスター(感染者集団)が発生していない施設。飲食店の酒類提供時間については、午後7時までの制限を同10時まで延長し、緩和した。一方、感染リスクが高いとされるスポーツジムやナイトクラブ、カラオケ店(テレワークに活用する場合を除く)などの一部施設は、引き続き休業を求めた。

 県は、図書館と博物館、美術館(いずれも床面積1千平方メートル超)についても全面的に解除した。県立学校については、6月1日から分散登校の形で再開する方針を明らかにしている。

 一方、県内自治体には公共施設の再開に慎重なところもある。坂戸市は25日、新型コロナウイルスの感染予防のため今月31日までとしていた図書館など37の公共施設の休館を、6月30日まで延長すると決めた。政府は緊急事態宣言を解除したが、「終息が本当か見極める必要がある。感染の第2波が7~8月に来るとの予想に備えれば、6月の行動も重要になる」(石川清市長)ため。7月以降については、6月下旬に判断するという。

 合わせて市は、給付金や補助制度など様々な生活支援策を紹介し、宣言解除後も手洗いや「3密」防止を継続するよう呼びかける広報誌の臨時号を全戸配布する。近く石川市長が、市民に辛抱を続けるよう求めるビデオメッセージを動画サイトの市公式チャンネルに投稿する。(長谷川陽子、西堀岳路)

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 緊急事態宣言は解除されたが、医療関係者は新型コロナ感染拡大の「第2波」を警戒する。

 埼玉県医師会の金井忠男会長は宣言解除後でも「感染者はゼロにはできない」と指摘。「(感染拡大が)再燃した時に、いかに早く察知して対応するかが問われる」と話す。新型コロナへの対応策は「もぐらたたきのように何回かの波を抑えてワクチンを待つ。ワクチンと薬ができても、それは季節性インフルエンザと同じように重症化を防ぐためのものと考えたほうがいい」と言う。

 県は既に第2波に備え、外出自粛や休業を再び要請する際の目安を定めた。目安となる項目は、県内の新規感染者数と東京都の感染者数とした。集団感染者分も人数に含める。集団感染から2次、3次感染と広がる可能性があるからだ。また、重症者用の入院ベッド占有率が50%超になった場合は県内感染者数の数値を3分の2に減らし、早めに要請できるようにする。

 大野元裕知事は「(感染者数が)急激な場合には指標と関係なく、(外出自粛などを)お願いする可能性がある」としており、再要請については第2波の勢いに応じ弾力的に判断するとしている。(釆沢嘉高、松浦新