[PR]

 緊急事態宣言の全都道府県解除を受け、政府は今後、水際対策の緩和に向けた本格的な検討を始める。国内外の感染状況を見ながら、ビジネス目的の往来などから段階的に広げていく見通しだが、訪日観光客(インバウンド)が戻るのは当分先になりそうだ。

 安倍晋三首相は25日の記者会見で「感染再拡大の防止と両立する形で、国際的な人の往来をどのように部分的、段階的に再開できるか、対象国、対象者、手続きを含め、慎重に検討していく」と表明した。

NSSで今月から議論

 国家安全保障局(NSS)は今月、関係省庁を集め、水際対策の緩和に向けた議論を始めた。中韓からは3月の日中韓外相テレビ会議などで、企業関係者の往来再開を打診された。だが政府関係者は「第2波のリスクがある」と慎重な姿勢を崩していない。

 茂木敏充外相も22日の記者会見で「感染が収まりつつあると言っても、まだ注意が必要な状況だ」として、当面は今の措置を続ける方針を強調。その上で、まず経営者層や専門人材、次に留学生、最後に観光客など、段階的な緩和が必要との認識を示した。

 ただ、緩和に向けた課題は少なくない。中韓は今月からビジネス目的の往来を一部で再開したが、PCR検査による陰性確認を条件にしている。中韓は日本にも同様の対応を求めるが、今の日本の検査体制で対応できるかは不透明だ。日本の検査件数は世界的にも少ないため、「検査実施率の低い国は入国させないと言われかねない」(政府関係者)との懸念もある。

 茂木氏は「(感染が)収束しつつある国のグループから順次、実施していく」と述べるが、どこから始めるかの判断も難しい。新型コロナウイルスをめぐり米中の対立が深刻化するなか、首相官邸関係者は「中韓から緩和を始めると、世界的に誤ったメッセージになりかねない」とも話す。

新たに11カ国から入国拒否

 一方、政府は25日、国家安全保障会議(NSC)の緊急事態大臣会合を持ち回りで開き、27日からインドなど11カ国について外国人の入国を原則拒否する措置を決めた。入国拒否の対象外の国・地域については、5月末までの期限としている査証(ビザ)の効力や免除の停止措置などをさらに1カ月延長する。政府は2月から中国・湖北省を手始めに水際対策を順次強化しており、入国拒否の対象はこれで111カ国・地域に広がる。

 観光庁の発表によると、4月の訪日外国人客は2900人で、前年同月より99・9%減った。「鎖国状態」(政府高官)は日本経済に深刻な打撃を与えている。(太田成美)