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 新型コロナウイルス感染症の治療薬として効果が期待されているアビガン(一般名ファビピラビル)について、藤田医科大学(愛知県)は26日、全国の患者2158人に使った観察研究の結果を日本感染症学会ホームページで発表、軽症者の約9割が回復したという。ただ発症者の8割は軽症のまま治ることがわかっている。今回はアビガンを使わない患者の治療結果がないため、薬の有効性を比較検証できないという。

 観察研究に参加した患者の内訳は酸素吸入が不要な軽症患者が976人(45%)、酸素吸入が必要な中等症の患者が947人(44%)、人工呼吸器などが必要な重症患者が235人(11%)。それぞれについてアビガン使用開始から7日目、14日目、入院から約1カ月後の症状をまとめた。

 データのそろった1282人の分析では14日目に症状が改善した割合は軽症が88%、中等症が85%、重症が60%だった。一方、1カ月後では重症の32%の人が亡くなり、5%の人は症状がより悪くなっていたという。

 アビガンは富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ薬でウイルス遺伝子のタイプが同じ新型コロナウイルスにも効く可能性が指摘されていた。治療薬として承認されていないが、治療法が限られるなか全国の医療機関では倫理委員会の審査や患者の承諾を得るなどして使用。その結果を藤田医科大が集計していた。今回の発表は5月15日現在の中間報告だ。

 アビガンは動物実験で胎児の健康への悪影響がわかったため妊婦や妊娠している可能性のある人は使う対象になっていない。観察研究では患者の約25%に何らかの副作用が出た。内訳は高尿酸血症(16%)や肝機能障害(7%)などだった。日数がたてば元に戻る数値だという。

 厚生労働省の診療の手引によると、新型コロナウイルスによる感染症では熱やせきなど何らかの症状が出た人の8割は、重症化せずにそのまま回復するという。26日にインターネットで会見を開いた同大の土井洋平教授は、軽症者の9割が回復したことについて「アビガンによる効果であるかは判断できない」とした。一方で「2千人以上のデータを踏まえて安全性についてはかなりわかった。予期しなかった副作用や重篤なものは報告されていない」という。(三上元)