いまできること⑩
新型コロナウイルスの感染拡大で、スポーツの大会、試合が軒並み中止、延期になっている。練習すら制限される中、できることを模索する選手たちの「いま」をオンライン取材などを通じ、紹介する。
「I never used to~ と I have never~ 違いを教えてください」
レスリングの登坂絵莉(26)=東新住建=がインスタグラムで呼びかけた。見ず知らずの人々から返信があり、前者は「昔は決して~しなかった」、後者は「~したことがない」という意味だと知った。
リオデジャネイロ五輪女子48キロ級の金メダリストはいま、英語の習得に燃えている。
昨年12月、東京五輪の代表選考会に敗れ、目標を失った。同世代の練習仲間は相次いで引退。所属先で社業に専念するなど次の道に進んだ。自身はひとまず現役を続けることにしたが、「私だけ何も変わらない。何かしなきゃ」。そんな折、新型コロナウイルスの影響で、拠点の至学館大(愛知県)で練習ができなくなった。富山県の実家に身を寄せ、1日の大半を家で過ごすなか、4月上旬から英語の勉強を始めた。
世界選手権でも3連覇し、国内外で見本となる存在。外国人選手から「技を教えてほしい」と請われることは度々あった。だが、「タックルに入る」すら英語で言えない。「教えるのを渋っていると思われるのが嫌だった」。レスリングにオフシーズンがなく、本腰を入れて勉強する機会はなかったが、英語力を上げる必要性はずっと感じていた。
さすがは、人一倍の練習量で…