【動画】熊本県益城町で、新型コロナウイルスに対応した避難所運営訓練があった
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 梅雨や台風の季節が近づいてきた。新型コロナウイルスとの「共存」も避けられないと言われる中、災害発生時に感染を広げないための模索が始まっている。熊本県内の自治体は避難所の運営方法を検討している。

 熊本地方気象台によると、県内における年間降水量の約4割は、梅雨の時期に降る雨が占める。

 益城町の町総合体育館では24日、新型コロナウイルスに対応した避難所運営訓練があった。想定したのは、感染が拡大する中で雨が降り、避難勧告を発令した場面だ。

 2016年の熊本地震直後、建て替え前の総合体育館には約1600人の町民が身を寄せた。足の踏み場もない状態だった当時の経験を踏まえ、感染防止策を講じた避難所運営を考えるため訓練を計画した。

 町職員ら計約100人が参加。運営職員、避難者や高齢者、介助が必要な避難者などの役に分かれ、物資配給や感染が疑われる人が出た場面などを想定し、対応策や動き方を確認した。

 避難者は体育館玄関で距離をとって並び、体温測定カメラで検温。受付で手続きを済ませてから入った。館内には飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、高さ約1・4メートルの段ボールを使ったパーティションで計20の居住区画を距離を置いて設置。中には段ボールで作ったベッドが置かれた。

 「避難所が暑い」「パーティション付近でくしゃみをしている人がいた」。避難者からそんな申し出があった想定で、冷却シートを渡し、次亜塩素酸水を使った消毒作業もした。密集を避けた食事の提供、車いす使用者のトイレや授乳希望者の案内などの手順も確認。発熱を訴える避難者を別室に誘導し、保健師が聞き取りをした。

 訓練の後、参加した町職員から「避難所では体調不良を申し出るのに周りの目線が気になると思う。運営者が巡回する形をとってもよいのでは」など避難者の人権をより配慮すべきだとの意見や、「弁当の配布で手袋を着けていないのが気になった」といった指摘が出され、課題が見えてきた。

 この日訓練を見守った益城町の今石佳太危機管理監によると、感染リスクを小さくしようとすれば、避難所の収容人数は通常の約半分になるという。今石さんは、本来は推奨していない在宅避難や車中避難を含め、総合的に避難のあり方を考えることが課題になると指摘。「まずは住民に、ハザードマップなどで自分の家がどういった環境にあるかを確認し、備えてもらう。併せて(自治体は)避難所運営を見直すことが必要ではないか」

 災害時に、新型コロナウイルスへの感染を恐れて避難をためらう人が出ることも懸念されている。

 九州各地が前線や低気圧の影響で大雨に見舞われた16日。美里町は午前9時ごろ、障害のある人や高齢者ら避難に時間がかかる人に向けて避難を呼びかける「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を町内全域に出した。町は「3密」を防ぐため、これまで避難所としていた町庁舎の狭い会議室を使うのをやめ、新たに体育館やホールなど広い場所を確保。この日、計4カ所の避難所を準備したが、午後5時に避難情報が解除されるまでに避難してきた人はゼロだった。昨年6月下旬~7月上旬に大雨が降った際は、最も多い日で約60人、少ない時でも10人は避難していたという。

 「避難者ゼロは想定外だった」と町防災交通係の担当者。感染症対策だけでなく、避難所に町民が来ない場合の対策も必要と受け止めている。「安全確認のためにも避難所を利用してほしいが、コロナの感染リスクを考えると、絶対に来て下さいとも言えない。複雑で難しい問題だ」

 熊本大の竹内裕希子准教授(地域防災、防災教育)は「一つのリスクを回避すればまた別のリスクが出てくるが、自分の身を守ることを優先してほしい。やみくもに不安になるのではなく、住民もハザードマップなどでリスクを確認するところから始める必要がある」と話す。熊本市など人口の多い自治体については、避難者の受け入れがより難しくなることが懸念される。避難先が校区ごとに割り振られている場合、校区外への避難などを計画することも必要だと指摘する。