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 緊急事態宣言の解除から一夜明けた26日、都内では様々な動きが見られた。

 台東区上野の「燕湯(つばめゆ)」はこの日から通常営業を再開した。浴場内には「飛沫(ひまつ)感染防止のため会話の自粛よろしくお願いいたします」の文字が貼り出され、客が静かに湯につかっていた。

 宣言が発令された4月7日から休業していた。銭湯は都の休業要請対象に入っていなかったが、約1キロ離れた位置にある永寿総合病院で大規模な集団感染が発生。常連客の中に皮膚炎で通院していた人もいたといい、「万が一、うちでも集団感染が起きたらと思うと開けられなかった」。

 1950年創業の老舗銭湯。多くの銭湯が営業を続ける中での休業は3代目おかみの橋爪雅栄さん(67)にとって苦渋の判断だった。普段は日に120~130人程度の客でにぎわってきたが、休業期間は週1度のボイラー整備以外はもぬけの殻に。客から「いつ再開するの?」「きょうは別の銭湯行ってきたよ」と話を聞くたびにもどかしい気持ちが募った。

 そんな中、常連客が番台に感染予防用のアクリル板を設置してくれた。客の思いに触れ、再開を決意した。再開初日の客入りはピークの1~2割ほどだったが、常連たちが朝から足を運んでくれた。「このままお客さんが堂々と集まれる日常に戻ってほしい」

 JR吉祥寺駅前のハーモニカ横丁。二つの洋服店を営む松井英明さん(85)は「解除になって、ほっとした。一日5人しか客が来ない時もあった」と話す。店を開いて62年。コロナは開業以来の危機だった。

 富士山や舞子などの描かれた日本風のTシャツや竹とんぼなども扱う。ジブリ美術館や井の頭公園の帰りに立ち寄る外国人客が多かっただけに、コロナは痛手だった。4月の売り上げは、例年の1割程度。商店街の人通りは多くても、洋服店には寄って行かない。価格が安いユニクロの袋を持って通り過ぎるのを横目で見ていた。メーカーへの支払いも出来ず、従業員4人の給料を支払うため、金策に走り回った。政府や武蔵野市からの支援の金はまだ手元には届かない。それでも、少しずつ客足が戻るのを、松井さんは期待する。

 井の頭公園の入り口にある老舗焼き鳥店「いせや公園店」では、5、6人がテイクアウトの食べ物を待っていた。店は、緊急事態の時も、営業時間を短縮し、営業は続けた。通常の客足の10分の1程度に落ち込み、食材を廃棄していた。だが最近の週末は、通常の4割程度まで客足は戻ってきている。店長は焼き鳥を調理しながら、「夜の客がどのくらい戻るか分からないが、とにかく緊急事態が終わりよかった」と話した。

 公園近くの居酒屋「井の頭 汁べゑ」では、5月8日からランチとテイクアウトを始めた。居酒屋を経営する会社の社員反田大地さん(29)は、「ランチ、やっています。よってください」と道行く人たちに声をかけ、「おうちを居酒屋に!」と書かれたチラシを配りていた。普段は夜だけの営業だが、ランチで少しでも店を知ってもらい夜、お酒を飲みにきて欲しいという。

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 「ステップいくつになれば店を再開していいのか、東京都の表を見ても分からない」。そう嘆くのは、千代田区内のビリヤード場の経営者だ。

 ビリヤードは、4年に1度の国際大会「ワールドゲームズ」の正式種目で、スポーツとしての側面もあり。ビリヤード場を「屋内の運動施設」と解釈すれば、ボウリング場と同じ「ステップ1」で営業を再開できるはずだ。しかし、ゲームセンターと同じ「遊技施設」に当てはめると、ステップ3まで待たなければならない。店は緊急事態宣言後に営業自粛に入った。「営業していいなら、いますぐにも再開したい。でも……」

 コロナ騒動後に現れた、「自粛警察」と呼ばれる匿名の嫌がらせを恐れている。「うちが先陣を切って営業を再開するのは怖い」と話す。たとえビリヤード場が「ステップ1」での営業再開が認められるとしても、「よその店の様子を見てからにしたい。苦しいけれど」と声を落とした。

 立川市と昭島市にまたがる国営昭和記念公園は、27日から無料エリアの利用を再開する。同公園は、3月28日から臨時休業していた。開園時間は午前8時半~午後6時で、屋内施設や有料エリアは引き続き休業する。

 奥多摩町は26日、4月20日から続けてきた「不要不急の来町自粛のお願い」を、都内からの来町に限って解除すると決めた。町内全域の観光駐車場の閉鎖を27日から徐々に解き、台風被害からの復旧作業が続く日原地区内を除く約30カ所を、30日からすべて開放する。休業中の観光施設も30日以降、順次営業を再開する。

 町は、全国に緊急事態宣言が出された4月16日以降も車やバイクで訪れる人が大勢いたため、同20日から来町自粛を求めた。同25日からは全域の駐車場が閉鎖され、来町者は激減。町内で土産物などを扱う商店を営む川久保香代子さん(74)は「今年は大型連休中もまったく売れず、食品の多くは処分するしかなかった」と振り返る。自粛要請の解除が決まり「やっと、とは思いますが、少し怖い気持ちもあります」。町内にまだ新型コロナウイルスの感染者は出ていない。店内に張った感染防止のビニールシートはしばらくそのままにする予定。「早くコロナが終息して、何の心配もなく皆さんを迎えられる日が来てほしい」

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 杉並区の城西病院は26日、4月30日から停止していた初診外来診療、新規入院、救急を含む全業務を再開した。健診センターは6月1日から再開する。同院では5月10日までに、入院患者10人と看護職員9人の計19人が新型コロナウイルスに感染した。その後、感染者は確認されていないという。

 紹介状や予約のない外来診療を制限していた八王子市の東京医科大八王子医療センターも26日、制限を解除した。センターは感染症指定医療機関の一つで、制限は4月20日から。