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 和歌山市の南海和歌山市駅前の再開発事業が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。駅に併設する複合施設「キーノ和歌山」のオープンは当初予定の4月下旬から約1カ月半遅れ、ホテルの開業日は未定だ。市街地活性化の目玉として期待されていたが、逆風の中のスタートになった。

 真新しい建物が目立つ南海和歌山市駅。当初、複合施設の商業ゾーンと市の新市民図書館の開業予定は4月24日とされた。しかし、5月下旬でも、入り口は閉ざされ、階段やエスカレーターにはロープが張られている。

 同駅は1903年、和歌山の玄関口として開業した。市民には「市駅」と呼ばれ、親しまれている。だが、徐々に中心駅は、市駅から東に約3キロ離れたJR和歌山駅へと移った。利用者数も減少。60年代後半の最盛期から半世紀で3分の1まで落ち込み、1日あたり約1万7千人で推移している。2014年には市駅に併設されていた高島屋和歌山店が閉店。ここ数年は、和歌山駅周辺でマンションなどの開発が進む一方、市駅周辺の空洞化が目立っていた。

 市駅の衰退を打破しようと浮上したのが、市と南海電鉄が共に進める再開発計画だ。17年4月から元の駅ビルを解体し、商業棟やホテル棟などを建設。総事業費は約120億円だった。

 複合施設の商業ゾーンには、生鮮食品を扱うスーパーやレストラン、フィットネスクラブなどを誘致した。ホテル棟は12階建てで、全国チェーンの「カンデオホテルズ」が運営。また、公益施設棟には新市民図書館が入り、レンタル大手「TSUTAYA」を運営する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」が指定管理者となった。南海電鉄は「和歌山の玄関口として、周辺活性化の旗印に」と期待を寄せていた。

 しかし、新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言の全国への拡大を受け、商業ゾーンと図書館の開業延期が発表された。南海電鉄によると、商業ゾーンについて年間200万人の来場を想定していたが、「先行きは見通せない」と語った。

 ホテルは4月30日の開業予定だったが、こちらも延期になった。運営会社によると、部屋数は120室で最大宿泊人数は約300人。インバウンドによる集客も見込んで、初年度は80%の稼働率を目標としていた。だが、稼働目標は70%に下方修正するという。担当者は「前半は内需中心に注力する」。

 市は、駅前再開発にあわせ「相乗効果を狙う」として、商業施設の建設など、周辺市街地の再開発も進める予定だった。だが、新型コロナの影響で計画は一時中断。地権者との話し合いは対面で行うが、今は難しいために仕切り直しを迫られている。

 商業ゾーンについては、感染拡大防止策を徹底し、6月5日に開業することが決まった。ホテルも7月の開業を目指しているという。ただ、これまでのようにインバウンドの集客や、市民を集めたイベント開催を期待できるかは不透明だ。市都市再生課の中野昌則班長は「逆風が吹いている。早期の収束を願うしかない」とため息をついた。(藤野隆晃)