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 新型コロナウイルスの影響で止まった芸術、文化活動への公的支援が欧州各国で広がっている。芸術が社会や経済に欠かせないとの判断からだ。行動規制の解除が進むなか、活動が再開し始めた。

 外出禁止令が約2カ月続いたフランスは今月上旬、芸術支援策を発表。30歳未満の芸術家を中心に公的事業を発注▽撮影が中止された映画への補償基金の設立▽芸術の不定期労働者が受け取る手当の要件緩和――などを打ち出した。

 「映画撮影が中断していた間も、スタッフの給料を国が補償してくれた。撮影がさらに遅れても、国が費用を負担してくれることになった。フランスで映画の仕事をしていてよかった」

 パリの映画プロデューサーのバネッサ・バン・ズュイレンさん(51)は前向きだ。来年2月に公開予定だった映画「エッフェル」の撮影が遅れている。パリ万博(1889年)に向けてエッフェル塔の完成を目指す設計者ギュスターブ・エッフェルの恋愛物語だ。

 撮影は昨秋、3分の2ほどを終えていた。残りは今年3月17日に撮るはずだった。だが、当日にフランスで外出禁止令が始まり、撮影中止を余儀なくされた。急きょ倉庫を探し、撮影のセットや衣装を2カ月間、保管してきた。今月11日の外出禁止令解除を受け、来月4日に再びカメラを回すと決めた。

 だが、役者同士が社会的距離を保ち続ける撮影は不可能だ。そのため、独自の対策を導入するという。俳優は撮影前の2週間、自主隔離。撮影する2カ月間は、俳優やスタッフは家族も含めた外部との接触を断ってもらう。さらに、シナリオも書き直した。「幸い、大半の恋愛シーンや、(多くの人が集まる)エッフェル塔の完成式典は撮り終えていた。コロナ後では無理な場面だった」。それでも、キスシーンは濃厚接触に当たるので断念。取っ組み合う場面は、ののしり合う筋書きに変えた。さらに室内の場面を減らし、なるべく屋外の撮影に切り替えた。

 現場のカメラマンは防護服を着て撮影し、俳優の衣装も使うたびに消毒する。スタッフの移動も、公共交通機関を避けてタクシーなどを使う。撮影現場には医者や看護師も常駐させる。

 感染対策などで追加費用は35万ユーロ(約4100万円)以上になる。それでもズュイレンさんが再開に踏み切れたのは、感染が原因で今後の撮影が中断しても、損失を国が支援してくれるからだという。(パリ=疋田多揚)