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 コロナ禍に負けまいと、在宅医療・介護職の有志が、立ち上がった。規模が小さく1事業所では確保が難しいマスクなど感染防御資材を、法人の枠を超え地域単位で確保していく。今後自宅や介護施設で暮らす高齢者らが新型コロナウイルスに感染した場合も、そこに資材を集中投下できるようにする仕組みだ。

 プロジェクト名は「在宅医療・介護現場への感染防御資材等供給支援プロジェクト」。看護師や医師、歯科医師、理学療法士やケアマネジャーら約20人が、個人の資格で参加している。

 自宅や介護施設に訪問診療する在宅医療クリニックは、病院に比べ規模が小さく、訪問看護ステーションもスタッフは10人未満のところが多い。訪問介護を担う事業所も同様だ。こうしたところではサージカルマスクや医療用ガウンなど感染防御資材を多くストックすることが難しい。そこで、市区町村などの地域単位で拠点となる場所にストックし、陽性者が出た場合に、その事業所に集中投下する仕組みを、有志が思いついた。

拡大する写真・図版4月中旬、在宅ケアの現場での感染防御資材の確保などについてZoomで話し合う訪問看護師ら有志たち。左上が吉江悟さん、その右が佐々木淳さん=佐々木さん提供

 中心になったのは、首都圏で12カ所の在宅医療クリニックを運営する佐々木淳医師(46)と、千葉県で訪問看護ステーションを運営する吉江悟さん(40)。

 4月中旬、佐々木さんがフェイスブック上に感染防御資材の不足について投稿しているのを見た吉江さんが反応、2人でZoomで対策を話し合った。その後、吉江さんの仲間の訪問看護師らも交えZoom会議を開き、「資材の確保は、全国に無数にあるすべての事業所に充足させる、というのではなく、必要なところに確実に届く仕組みをつくるべきだ」ということで合意したという。

 活動は大きく「感染防御資材の確保」と「介護職向け資料の作成」。まずサージカルマスクや医療用のガウンや手袋、フェースガードなどの感染防御資材を地域単位で確保する。1~2週間分の「感染防御パッケージ」を段ボール詰めしておく。感染者と非感染者を区分する「ゾーニング」のため、マスキングテープも入れる。

 既に、医療・災害支援を行う公益財団法人「風に立つライオン基金」などから、資材が寄付されている。佐々木さんら有志は、箱詰め作業を始めており、まずは数百セットを目標にパッケージ化していく。在庫管理や配送については、日本訪問看護財団などから協力を得る予定という。

拡大する写真・図版佐々木淳さんが運営する医療法人社団悠翔会の法人本部に、「風に立つライオン基金」から寄付された医療用のガウンやマスクなど=東京・新橋、佐々木さん提供

 もう一つは、介護職にもわかりやすい感染防御の知識・技術に関する資料の作成・配布だ。イラストをつけて、排泄(はいせつ)介助など場面別に注意点をわかりすく解説する。マスクや手袋、ガウンなどの着脱についても、「なんとなく知っている」ではなく、「手順をしっかり実践できる」ようにしていくのが狙いだ。リーフレットは近く完成予定で、でき次第、感染防御パッケージに入れる。オンラインの動画教材も作成中だ。

 同プロジェクトでは、資金支援や事務局機能の代行などをしてくれる団体・個人を募集中だ。今は任意団体だが、今後法人化することも検討している。

 今回の取り組みについて、佐々木さんは「新型コロナウイルスとの闘いの最前線は、在宅医療・介護現場だ。これから来るであろう第2波、第3波に備えて、在宅の現場が、きっちり対応できる体制を整えないといけない」と話している。

 吉江さんは、市町村が進める「在宅医療・介護連携推進事業」の活用を訴える。「この事業は、今回の資材・ノウハウ供給を考えるにふさわしい既存事業だと思う。感染管理の知識と技術を、地域の医療従事者が介護従事者らに適切に伝えていくことは、まさに『医療と介護の連携』ではないでしょうか」としている。

 問い合わせは、covid19hcjp@gmail.comへメールで。(佐藤陽)

拡大する写真・図版佐々木淳さんが運営する医療法人社団悠翔会の法人本部に、「風に立つライオン基金」から寄付された医療用のガウンやマスクなど=東京・新橋、佐々木さん提供

佐藤陽

佐藤陽(さとう・よう) 朝日新聞Reライフプロジェクト室主査

朝日新聞Reライフプロジェクト主査。横浜総局記者時代に、神奈川の超高齢化の実態や取り組みを描いた「迫る2025ショック」を2年半連載した。6月20日に「日本で老いて死ぬということ」(朝日新聞出版)として発売される。早稲田大学非常勤講師。