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 新型コロナウイルスによる外出自粛の動きは、「ひきこもり」から脱しようと努力をしていた人たちにも影響を及ぼした。貴重な外出の機会だった当事者会が開催できず、当事者も支援者も心配を募らせる。

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 「外に出る理由がなくなった」。神奈川県内で両親と暮らす20代男性は、現状をそう話す。普段は自室にこもって生活しているが、月に2~3回は地元のNPO法人が開く当事者会に足を運び、直接他人と話す貴重な機会になっていた。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で3月末から会場が閉鎖になり、当事者会も当面中止に。「元からひきこもりだけど、今の状況は意外とさみしい」。家から出ることはほとんどなくなったという。

 都内で働く男性(32)も、「あの頃の気持ちがぶり返しそうになる」と吐露する。学生時代のいじめが原因で5年前までひきこもり生活を送っていた。カラオケ店でアルバイトをするようになったが、職場は5月末まで休業に。今はほとんどの時間を自宅で過ごしていて、「コロナが収まった時、外に出られない体に戻っているんじゃないか」と不安を募らせる。

 心の悩みを抱える人の支援をしているNPO法人「CNSネットワーク協議会」(渋谷区)も、週3回程度開いてきた当事者会を、2月末から中止せざるをえなくなった。

 お互いの悩みを語り合ったり、ボードゲームをしたりと、この場を活用してきた当事者たちからは「再開はいつ?」「話し相手がいません」という声が届く。

 当事者たちの「居場所」を何とかを維持しようと、3月からはオンライン会議アプリを使っての当事者会を始めた。参加数は普段より少なく数人程度。「いつもと変わらない」という参加者が多かったが、不参加の人にもメールで声をかけるなど状況の把握に努めている。

 代表で保健師の後藤美穂さんは「当事者会をステップに一歩を踏み出そうとしていた人たちが、居場所を失って孤立し、完全なひきこもり生活に逆戻りしてしまうのでは」と懸念する。(大山稜)

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 多数の人々が「ステイホーム」を求められる状況を、違った角度で見る人もいた。10年以上にわたり都内でひきこもり生活を続けているという男性は「外に出ろと言われるところが、今は『家にいろ』。普段抱えている後ろめたさが少し和らいでいる」と話す。

 経験者らでつくる当事者団体「ひきこもりUX会議」の林恭子代表(53)は、「当事者は好きでこもっているわけではなく、様々な理由で外に出られない心理に追い込まれている」と強調する。そんな構造が、コロナ禍で多くの人が置かれている外出自粛の状況に少し似ている、と感じている。

 ひきこもりには「楽をしている」という偏見も強い。「外出自粛という共通体験を通して、自宅にこもり続けることは決して楽ではない、と当事者への理解が進むことをかすかに期待しています」