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 衆院憲法審査会が28日、今国会で初めて開かれ、憲法改正の手続きを定める国民投票法をテーマに自由討議を行った。インターネット上の広告規制や表現をめぐる問題などに議論が集中した。一方、同法改正案の早期採決をめざす与党と、慎重な野党の溝は埋まらないままだ。

「現行法はアナログ時代の広告規制」 与党も問題視

 この日の自由討議では、影響力を増すネットへの対応など国民投票の課題が次々と浮き彫りになった。

 公明党の北側一雄氏は「デジタル化が急速に進展し、メディアが多様化・複雑化している。現行の国民投票法(の規定)は、アナログ時代の広告規制にもみえる」と主張した。

 すでにネット広告は放送広告より強い影響力を持つが、事業者が多様で法規制は困難だと指摘。「広告主である政党側で自主規制ルールを決める方が実効的だ」と述べ、自主規制を検討する委員会を憲法審に設けるべきだと提案した。

 国民民主党の玉木雄一郎氏も、2007年の同法成立時からの最も大きな変化として「メディアの激変」を挙げた。有権者の行動を変容させかねないネット広告について、「しっかりと法規制を入れていくべきだ」と主張した。SNSを介した大量のデータ分析を駆使し、選挙や国民投票に影響を及ぼした海外の事例を紹介。「データ社会の高度な進展は民主主義の前提そのものを変質させる可能性がある」として、法規制の必要性を強調した。

AIでゆがむ意思決定、フェイクニュースに危機感

 無所属の山尾志桜里氏は、個人の決定がAI(人工知能)によって左右される懸念を指摘。スマートフォンの利用を通じて、認識がないまま意思決定が操られる可能性があるとした。「憲法改正といった国家の基本的な重大な意思決定に、AI技術を通じて外国からの干渉も行われていると言われている点も、しっかり押さえるべきだ」とも語った。

 ネット上の自由な発信によって起きる中傷やフェイクニュースの問題を指摘する声も上がった。

 立憲民主党の山花郁夫・野党筆頭幹事は「ネット上の(投票)運動では、誹謗(ひぼう)中傷が行われる恐れがある。フェイクニュースなどの流言飛語が跋扈(ばっこ)する恐れもあり、対応策の検討が必要」。公明の浜地雅一氏は「今では広告を使わなくてもネット上で様々な発信ができる。SNSでは匿名で主張することで、かなり影響力のある表現もできる」とし、ネット上の匿名の発信への対応も考えるべきだとした。

 一方、自民党の船田元氏はテレビCMについて「誹謗中傷が目に余ったり、一方的な主張が大量に流されたりする時には、国民の健全な世論によって淘汰(とうた)されるはず」と述べ、規制強化に慎重な考えを示した。

国民投票法改正案をめぐるズレは大きく

 与党側は自由討議を足がかりに同法改正案の早期成立をめざす構えだが、議論の結果、立憲など野党側との認識のズレはむしろ広がったといえる。

 自民の新藤義孝・与党筆頭幹事は「(改正案を)早急に質疑、採決して結論を得るのは当然のことだ」と述べ、広告規制の議論は採決後に行うと主張した。緊急時の国会のあり方について議論する必要も訴えた。日本維新の会の馬場伸幸氏も「与党の対応も遅すぎるぐらいだが我々は是とする」と同調した。自民の石破茂氏は「(与野党で)一致点を見いだすことは可能だ。これができたから、すぐ国民投票だと思っている人はいない」と野党側の不安払拭(ふっしょく)を求めた。

 だが、国民の奥野総一郎氏は政党によるテレビCM禁止を含む同党の改正案との並行審議を要求。「国民投票法の抜本的な改正をやってもらいたい」と述べ、自民などによる改正案の先行採決に反対した。立憲の山花氏も「(投票の)公正さを担保する議論を併せて行うことを求める」と慎重姿勢を示した。国民幹部は「野党側が譲る必要は全くない」と語った。(山下龍一、大久保貴裕)

国民投票法改正案とは

 憲法改正手続きを定める国民投票法の利便性向上のため、自民、公明、日本維新の会などは2018年6月、大型商業施設への共通投票所設置など7項目を盛り込んだ改正案を国会に提出した。国民民主党は政党のテレビCMを規制する改正案を独自に提出している。