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 新型コロナウイルスの感染者が27日まで5日連続で確認された北九州市。さらなる拡大を食い止めようと、市は検査・医療体制を充実させ、感染防止策を呼びかける。子どもを持つ親は感染を不安視し、観光地からは悲痛な声が上がる。

 「感染の封じ込めに全力を挙げている」。新型コロナウイルスの感染者数の増加が続いていることを受け、北九州市の北橋健治市長は28日、定例記者会見で市の対策を説明した。現在の状況を「第2波の入り口」とし、市民に感染防止対策の徹底を呼びかけた。

 感染拡大が続く要因を、北橋市長はPCR検査体制の充実のほか、市内で23日間、新規の感染者が出ず、緊急事態宣言解除後に市民の活動が活発になったと考えられることを挙げた。

 そのうえで、感染者への徹底した聞き取りや濃厚接触者全員にPCR検査をすることで、感染経路の特定やクラスターの発生を防ぐ方針を示した。国から派遣を受けた厚生労働省クラスター対策班の専門家には、保健所の調査方法や感染拡大にまつわるデータの分析について助言してもらう。

 感染者が急増しているものの、県との協力で入院先80床を確保しており、当面の受け入れに心配はないという。今後、100床に増やしていくことを目指し、新たな人工呼吸器などの購入も準備しているとした。

 「我々に出来ることは限られている。人との接触を通じて感染するのだからその接触を減らす」と述べ、市民にマスク着用や手洗い、人との距離を保つことの徹底を呼びかけた。

 一方で、学校の休校には慎重な姿勢を見せた。商業施設への休業要請を出すよう小川洋知事に求めるつもりはあるかとの問いには「社会、経済活動を早く再開してほしいとの声が渦巻いているのも事実」と話した。「ここはしっかり気を引き締めて防ぎきらないと、次の社会、経済活動の再開、前進はないと思う」

 田島裕美教育長は取材に「始まったばかりの学習習慣、生活習慣を止めるわけにはいかない」と話し、市立学校を一斉休校する必要はないとの考えを示した。感染予防を徹底するため、給食の提供や登校の方法を検討していくという。

 長女が小学1年の市内の女性(36)は「感染が不安。できたら休校にしてほしい」と話した。

 6月からの本格再開に向けて準備を進める市内の幼稚園や保育園の関係者も胸中は複雑だ。市保育所連盟の酒井光義会長は「6月からほとんどの園児が登園してくるので心配している」と話す一方、新型コロナに対し、もう一度、社会全体で気を引き締めるきっかけになるのではとも考える。

 小倉北区の居酒屋「奈津子」の店主、九重正伸さん(42)は今週末に予約を入れていたなじみの客に電話した。「心配でしたらキャンセルしてください」。

 14日に営業を再開したばかりで、席数を半分にするなど対策を取る。店から感染者が出るリスクを考えると休みたいが、食材費や家賃を考えると「千円でも2千円でもほしい」。だが、週末の予約はなくなった。

 市内きっての観光地、門司港レトロ地区では閑古鳥が鳴き、商業施設「海峡プラザ」に人の姿はほとんどなかった。土産品店の女性店員は「昨日ぐらいからぐんと減りました」と肩を落とした。施設の管理事務所からは当面、営業を続けると連絡が来たが、客が来なければコストがかかるばかりだ。「外出自粛ももう限界。経済を回すことも考えないと、商売がダメで自殺する人も出てくるかも知れない」と訴えた。