香港治安法に広がる絶望感 進む米中対立、新冷戦危惧も
香港=益満雄一郎、北京=冨名腰隆、ワシントン=大島隆
中国が推し進める香港の国家安全法制が、1997年の返還時に約束された「一国二制度」を大きく揺さぶっている。習近平(シーチンピン)指導部は「国家の安全を守るのは国の責務だ」と主張するが、米国が強く反発。両大国の対立を新たな次元に導きそうだ。
香港の一国二制度にとって大きな節目となった28日、香港は静かだった。
「今度ばかりはどうすることもできない」
アルバイトの香港人男性(26)はこう漏らす。昨年、デモで撤回に追い込んだ香港政府の逃亡犯条例改正案と違い、国家安全法制の決定権は北京が握っているとの絶望感が広がる。
28日の全国人民代表大会の閉幕後、会見した李克強(リーコーチアン)首相は「香港政策を変更するのか。一国二制度はあきらめるのか」と記者に問われ、「一国二制度は基本的な国策だ。香港人による統治も高度な自治も一貫している」と反論した。
習近平(シーチンピン)指導部にとって、昨年の大規模デモは単に香港の混乱以上の懸案だった。中国は「(東欧や旧ソ連圏などで親米勢力が政権転覆を果たした)カラー革命の様相だ」と、デモの背後に米国の力が働いているとの疑いを深めた。
国際社会の批判も覚悟で新法制に踏み切ったのは、デモ再燃の芽を摘まねば政権の根幹が揺らぎかねないとの危機感があるからだ。
1997年に香港が返還され…