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 新型コロナウイルスの影響で、飛驒地域では移動販売をする「移動スーパー」の需要が高まっている。高齢者らが混み合った店舗を避けているほか、外出自粛で県外への買い出しが控えられたことが背景にある。事業の拡大を検討している事業者もある。

 5月中旬、岐阜県高山市の住宅街に1台の軽トラックが止まった。市内に6店をもつスーパー「ファミリーストアさとう」の移動販売車だ。待っていた女性客3人が、満載された約1200点の商品の中から、野菜や肉、生活雑貨を次々に買い物かごに入れていく。

 バナナや牛乳などを買った下島智恵子さん(85)は「今はお店に行くのが一番心配。移動販売は家のそばに来てくれるのでありがたい」。別の女性(84)も「家族に頼むより自分で選べるのがよい」と話す。販売係の倉重武典さん(24)によると、新型コロナウイルスへの感染を心配する年配のお客が増えているという。

 さとうによると、4月の移動販売の売り上げは前年同月比で10~15%ほど増えた。4年前から移動販売をしており、今は平日に3台が高山、飛驒両市を回る。さらに1台増やす計画もあり、需要の高まりを受けて予定を早めるという。

 スーパーが少ない山間地でも、需要が伸びている。

 世界遺産・白川郷のある白川村は村内のスーパーが1店舗で、隣の富山県や高山市へ買い物に出る世帯も多いという。移動の自粛が呼びかけられたため、村で買い物ができる移動スーパーが改めて注目された。

 飛驒地域で5店舗を展開する「駿河屋魚一」(高山市)は2年前、白川村で移動販売を始めた。荷台に冷蔵庫を載せた2トントラックで生鮮食品、刺し身や総菜など約1千点を扱う。

 高齢者だけでなく、子育て世帯の母親も多く訪れる。休校が続き、子どものための弁当や菓子、アイスクリームなどがよく売れる。4月の移動販売の売り上げは昨年同月比1・5倍~2倍に伸びたという。

 販売車は1日で村内の12~13カ所を回るが、途中で品薄となり、商品を追加するためのトラックを呼ぶことも。販売担当の武内豊彦さん(58)は「すごい売れ行きにびっくりしている。店が少ない地域なので、緊急事態宣言が解除されても需要は続きそうだ」と話している。

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 スーパーの店舗でも、感染対策が進んでいる。

 「さとう」や「駿河屋」の店頭では客に手の消毒を呼びかけ、レジにはビニールカーテンを取り付けた。間隔を空けて会計を待ってもらい、ショッピングカートや買い物かごも消毒している。さとうの担当者は「カートを自分で消毒するなど、自主的に対策しているお客さんも増えている」と話す。

 外出自粛が呼びかけられるなか、高山市役所には「スーパーが混んでいる」などの声が寄せられたという。市は「買う物を事前に決めて、すいている時間帯に少人数で買い物をして」と呼びかけている。(山下周平)