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 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちのくらしや社会を大きく変えました。直面する不安に、どう向き合い、乗り越えていけばいいのか。各界で活躍する人たちに尋ねました。

拡大する写真・図版料理研究家のコウケンテツさん=山本和生撮影

朝ご飯が菓子パンの日も

 僕の生活もずいぶんと変わりました。緊急事態宣言が発令され、3人の子どもは学校や保育園に行けず、イベントなどは中止。リモートワークになりました。妻はマネジャーで共働きです。家で3人の子どもをみながら、撮影も自宅でするようになり、普段より負担は増えた。毎日がドタバタでした。

料理研究家。ユーチューブチャンネル「Koh Kentetsu Kitchen」を開設。著書に「コウケンテツのだけ弁」(扶桑社)など多数。テレビ番組「たべごころ」(RKB毎日放送)にも出演中。

 外食はできないし、出前もお総菜も限られる。多くの人が料理をせざるをえなくなった。「作るのがつらい」。聞こえてきたのは、家庭で料理を担う追い込まれた人の声。それは女性、特にママたちでした。以前からそうだったと思いますが、改めて食卓の負担が、一人にかかりすぎている、それが露呈したと思います。

 家族のために3食をつくるのは、料理が生業の僕でもしんどい。僕は以前、「手料理が子どもの未来をはぐくみます」なんて言ってました。本当に謝りたい。毎日なんてできません。うちも朝ご飯が菓子パンのことも。子どもは案外喜ぶんですよね。長男と長女はサンドイッチや卵料理など、自分たちで朝食を用意することも増えました。パパやママが大変なのをみかねて、家事のお手伝いもしてくれるようにもなりました。

記事後半では、これからの食卓のあり方についても語っています。

日本の家庭は手料理をがんばりすぎかも

 時間や心にゆとりがある時、食べたいものを作るのは楽しい。でも、毎日の食事作りってそうじゃない。献立を決め、予算内で買い物し、片付けまで。大仕事です。子どもと作る料理も大切にしていますが、それも余裕がある時だけ。

拡大する写真・図版次女を抱きながら仕事をするコウケンテツさん=コウケンテツさん提供

 今回、料理を楽しむ人もいた一方で、しんどいと思った人も多かった。僕は料理の楽しさを伝えたいと思ってきたのに、レシピを発信するだけでは足りなかったのでは、ハードルをあげてしまったのでは、と考えさせられた。ユーチューブチャンネル「Koh Kentetsu Kitchen」を開設したのもそれが理由。材料は少なく手軽でおいしいレシピを紹介したり、寄せられたコメントを読みながら、日々の食について、みなさんとざっくばらんにお話しできる場を目指しています。

拡大する写真・図版料理研究家のコウケンテツさん=コウケンテツさん提供

 日本の家庭は手料理をがんばりすぎかもしれない。食卓は豊かで誇るべきものです。でも、世界をみると、料理をあまりしない国も。僕が訪れたフランスの共働き家庭は、平日にほぼ料理はせず、朝はパンにジャム、夜は買ったお総菜を置くだけでした。弁当だってパンにチーズとハムを挟んだだけとか。アジアも仕事帰りに屋台で買うのが当たり前。毎日、同じようなものを食べている家庭も多い。手料理が並ぶのは当たり前じゃない。

 食卓はみんなでつくるもの。料理をしない人がテーブルセッティングと片付けを。そして、食べたら「ありがとう。おいしかったよ。ごちそうさま」は忘れないでほしいです。何を食べたかより、どう食べたか。インスタントでも「おいしいね!」と言い合えたらいい。冷凍食品や総菜が続けば、また、作りたくなるかもしれません。それでまた、手料理のよさにも気づくこともあります。メリハリです。家にいる時間が増え、いい意味でも悪い意味でも暮らしの中心が「食」になりました。身近な価値に気づく機会にもなったと思います。これを機に食卓のあり方を、もう一度、僕も考えたいと思っています。(聞き手・才本淳子)