拡大する写真・図版望月将悟さんに、沢を越えるがごとく、軽やかにカメラを飛び越えてもらった=静岡市葵区、加藤諒撮影

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 アルプスの高峰を何日もかけて走る山岳レースで、鉄人と呼ばれるランナーがいます。望月将悟さん(42)の本職は現役の消防士で、南アルプスを持ち場とする山岳救助隊の副隊長。その走りっぷりは、常人の想像をはるかに超えるものでした。

記事の後半では望月さんのインタビューをお読みいただけます。

 富山県魚津市の日本海の浜辺を起点に北アルプス、中央アルプス、南アルプスをつなぎ、太平洋(静岡市)へ。全長415キロを8日以内に自らの足だけで駆け抜ける。上り下りの累積標高差は2万7千メートル。隔年開催の日本一過酷な山岳レース「トランスジャパンアルプスレース(TJAR)」を2010年から4連覇した。40ポンド(約18キロ)の荷を背負うフルマラソンの世界記録保持者でもある。文字通りの鉄人だ。

 16年は大会史上初めて5日を切ってゴール。山小屋での食事や途中の食料・物品購入は規定で認められているが、18年はただ一人、水以外を補給しない「登山本来の姿」に挑んだ。ほかの選手より10キロ以上重い荷物を背負い、30人中7位に入った。

睡眠は10分、15分

 長丁場でもペース配分を考えず、最初から全力で飛ばす。睡眠時間は極端に短く5日余りで7~8時間。足首や体の痛みが限度を超え「どうしようもなく眠くなったら」10分か15分、道ばたに倒れ込んで眠る、を繰り返す。「眠らないのではありません。負けず嫌いだから、いつ追いつかれるかと思うと怖くて目が覚めるんです」

 南アルプスの最南端、静岡市井川地区で生まれ育った。TJARのコース上だ。幼い頃から傾斜地で遊び、お茶やシイタケが詰まった15~20キロの籠を繰り返し運び、足腰が鍛えられた。レースでは岩だらけの道でも転ばず、下りの速さに定評がある。「水たまりにいる魚をカラスやキツネより早く捕まえようと、河原の石の上を転ばないで走る術(すべ)が身についた」からだという。

 20歳で登山を始めた。重荷を背負って登りのタイムを競う国体の縦走競技に誘われ、山を走る苦しさと楽しさを知った。山岳レースに出て、実績のある選手と競ううちに才能が開花した。

 本職は静岡市消防局の消防司令で、山岳救助隊の副隊長だ。年間15回ほど出動する。ヘリコプターが遭難者を引き上げられる場所まで、自分より重い人を背負い何時間も歩くこともある。静岡市の最北端は国内3位タイの高峰・間(あい)ノ岳(3190メートル)で、南アルプスの南の3分の2は持ち場だ。「管内の山は誰よりも知っていたい」と、休日にありとあらゆる山道を走る。

 規定変更で、次回のTJAR(8月に開催予定だったがコロナ禍で延期)は出場できない。だが山を走り自然と出会い限界に挑戦する試みは一人でも続ける。17年、南アルプスから道のない尾根まで静岡市の市境一周235キロを5日弱で踏破した。次は「休みが取れる限度の1週間。コースは頭の中にありますが、まだ言えません」。常識外れの超ロングコースになるはずだ。(畑川剛毅)

拡大する写真・図版南アルプスを背に空を見上げる望月将悟さん=静岡市葵区、加藤諒撮影

ここからは望月さんのインタビューの一問一答です。望月さんの「強さ」はいったいどのように培われたのでしょうか。

 ――トランスジャパンアルプスレース(TJAR)を4連覇しました。強さの秘密を自己分析すると?

 下りの速さには自信があります…

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