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 午前7時に家を出て、自転車で約10分先の店に向かう。夫が先に看板を出し、家事を終えてやってきた妻が店内で花を飾る。カウンター11席だけの、こぢんまりとした店。午前11時に店を開けると、2人で自慢の洋食を振る舞い、午後10時に夫婦で帰宅する。

 40年間、それが小田延明さん(76)と妻の広子さん(75)の日課だった。

 東京・浅草生まれの延明さん。六本木や銀座のステーキ店で修業を重ねた。1980年、広子さんと一緒に地元で「ステーキハウス のぶ」を立ち上げた。念願だった自分の店だ。延明さんが焼き上げるヒレステーキと、広子さんがつくるビーフシチュー入りのオムライスが人気だった。

 浅草寺に近い店には、外国人観光客が多く訪れた。中国やフランス、タイ……。さまざまな国の客に感謝を伝えられるよう、メモ帳に30カ国ほどの「ありがとう」の言葉を書き、繰り返し読んで覚えた。「客とのふれあいが、なによりのやりがいだったから」

 今年2月。新型コロナウイルスが各国に広がり始めると、海外からの観光客はぱたりと姿を消した。1日70人を超えていた客は、3月には10人以下に激減。ディナー客は1人か2人だけ、という日もあった。店を開けても、食材や光熱水費で赤字が出てしまう。4月に入って間もなく、店を休むことにした。

 そのころは、「すぐに再開できるだろう」と思っていた。

 しかし4月7日、東京都などに…

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