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 新型コロナウイルスの感染拡大で、史上初となった全国高校総合体育大会の夏季大会中止を受け、各都道府県の高校体育連盟(高体連)で代替の大会が検討され、具体的に決まったところも出ている。ただ、地域によって状況は異なり、開催は簡単ではない。

拡大する写真・図版遠隔で行われる鹿児島県高校通信弓道大会に向けて練習する出水商の弓道部員たち=同校提供

拡大する写真・図版鹿児島県の出水商弓道部の部員ら=同校提供

3年生のみ 団体のみ

 佐賀県では独自の総合大会として、県高校スポーツ大会が6月13日から開かれる。県高体連、県高校野球連盟などが共催し、7月30日まで、野球も含めた29競技が実施される。

 山口祥義・佐賀県知事は5月25日の記者会見で「できる限り有観客で行いたい」と語った。感染拡大を防ぐため、様々な対策が取られる。

 サッカーは握手やハイタッチなどを避け、プレー中の選手以外はマスクを着用、応援は拍手のみとする。バレーボールでは、ボールを交換するたびにアルコール消毒をする。通常3人の記録員は1人に減らし、密集を避ける。日程短縮のため卓球や剣道は団体戦のみに。テニスは出場資格を3年生に限定した。

 長崎県高体連も27日、12競技で6~7月にかけて県レベルの大会を開くと発表。大分県高体連は、5月30日から6月にかけて開く予定だった県高校総体を7月に延期する形で、全35競技で実施することにした。

競技単体で 遠隔で

 競技単体での代替大会もある。鹿児島県では、遠隔で競う県高校通信弓道大会が開催中だ。参加校は部の活動時間中に競技を行い、的中数をメールで知らせる。28メートル先にある直径36センチの的を射る近的(きんてき)の団体戦で、5月22日から予選成績の受け付けを始めた。上位8校による決勝リーグが6月3~9日に開かれる。

拡大する写真・図版遠隔で行われる鹿児島県高校通信弓道大会に向けて練習する出水商の弓道部員たち=同校提供

拡大する写真・図版遠隔で行われる鹿児島県高校通信弓道大会に向けて練習する出水商の弓道部員=同校提供

 「鹿児島は弓道が盛んで、決勝リーグは毎年盛り上がる。少しでも再現できれば」と、県高体連弓道専門部の大倉一也委員長。昨年の全国高校総体女子団体で6位に入った出水商の蓑毛(みのも)美波さん(3年)は、中学から続けた弓道を今年でやめる。会場が学校でも、これまでの大会と同じようにはかま姿で臨む。「自分のいいところを見せられるよう頑張りたい」

 青森県では、6月13日から7月26日にかけ、県高校夏季サッカー大会が男女で行われる。

 愛媛陸上競技協会は8月8、9日に松山市で県高校選手権の開催を決めた。実施種目には「密」が懸念される長距離種目も含むが、競技協会の中山桂専務理事は「開催するならば平等にという声も多く、実施するに至った」と話した。(菅沼遼、辻隆徳)

■視点 「区切りの場」 生徒自ら企画しては

 都道府県の高体連では競技ごとの専門部の意向を聞き、3年生の部活動成果の発表の場を模索しているところが多い。

 ただ、実情をみると、容易ではない。学校が再開しても部活動は自粛だったり、練習はできても対外試合に制限がかかったりしている。準備期間が短いと、熱中症などの危険と隣り合わせになる。

 「公共施設が使えず、場所が確保できない」「審判を一般人から手当てするのが難しい」「大会でクラスターを発生させると、地域で熱中症などの患者を救えない事態を招きかねない」といった、感染防止からの壁や懸念も生じている。

 岩手県高体連は26日、代替大会は行わないことを各校に伝えた。佐藤義文理事長は理由の一つとして、「引退試合などを済ませ、進路準備に切り替えた生徒も多い。また揺り動かすのはどうか」と話す。今となっては、改まった舞台を望むかどうか自体、生徒の足並みがそろわなくて当然の状況でもある。

 鹿児島県高体連は27日、全県的な大会はせず、学校内の紅白戦や、近隣の数校による対外試合形式といった「区切りの場」の設定に、会場使用料や審判の交通費などの費用を補助すると発表した。

 多くの地域は、こうした小規模なやり方が現実的だ。願わくば、その具体案は、学習指導要領に「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と記される部活動の位置づけに立ち返り、生徒たちが企画するものであってほしい。紅白戦のチーム分けはどうするか、対外試合ならどことやるか、そして誰にどのように見てもらうか……。

 きっと、大人たちが整えた大会を目指してきた既存世代とは違う、価値ある体験になる。(編集委員・中小路徹