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 常陸牛やハマグリも……。コロナ禍で消費者の外出自粛や飲食店の休業が続き、県内で生産・出荷される高級食材の流通価格が落ち込んでいる。苦境に立たされながらも、新たな販路を模索する生産者の動きもある。

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 「価格は落ちていても、出荷するしかない」。茨城県が誇るブランド牛「常陸牛」を生産する「橋本畜産」の代表、橋本武二さん(66)は表情を曇らせる。

 同社は、年間約2千頭を出荷する業界大手。その牛の大部分が厳しい要件をクリアして「常陸牛」に認定されている。多くは食品メーカーなどを通じ、首都圏の飲食店やホテルなどに流通する。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、外食や観光などブランド牛を扱う業界の営業に逆風が吹いた。出荷する牛一頭あたりの単価は3月ごろから下落。橋本さんによると、4月には肉質の等級で最上位にあたるA5~A4ランクの肉の価格が3割ほど落ち込んだ。

 価格が落ち込んでも、出荷調整が難しいのが高級牛の特徴だ。細かく脂肪が入った「霜降り」の肉にするため、牛が摂取するビタミンを制限する生育方法をとる。出荷までの期間が長引くと健康状態が悪化する恐れがあるという。「いまは、ウイルスに対抗できるワクチンの開発を待つしかない」

 春に旬を迎える鹿島灘のハマグリ漁も打撃を受ける。

 東京の豊洲市場にも多く卸しているが、取引価格は前年の半分以下にまで落ち込んだ。価格下落を背景に、県内の漁は約1カ月半の休止を余儀なくされ、13日に再開したばかりだ。

 鹿島灘漁協の秋山竜士さん(34)は、「価格下落によるブランド力低下を心配する声もあるが、流通が不安定だと市場から必要とされなくなる恐れもある。少量でも出荷を続けることが大切」と悩ましい事情を語る。

 筑西市で食肉用のダチョウを飼育する加藤貴之さん(33)も「コロナがなかったら、もっと飼育数を増やせるのに……」と唇をかむ。ダチョウは低脂肪、高たんぱくな食材として知られ、加藤さんは東京都内を中心に、知人の牧場で育てた肉を客単価が高めの約100軒の飲食店に卸している。3月下旬から注文が減り、現在受注があるのは数軒だけだ。冷凍倉庫には、3千食分にあたる加工済みの肉が眠っている。

 ひなの状態で買い取り、自身の牧場で生産量を増やす計画も描いていたが、頓挫したままだ。「休業要請が解除されても、これまで通りの営業をする店がどれぐらいあるのか心配だ」

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 コロナ禍で販路が細る生産者が増える中、インターネット上で消費者に直接つながりを持つための仕組みが注目を集めている。

 消費者が農家や漁師などとやりとりしながらオンラインで商品を購入できるスマートフォンアプリ「ポケットマルシェ」は、4月に新規登録した生産者数が、2月の約4倍になった。ブランド食材の出品も増えているという。コロナの影響を受ける生産者を応援するため、運営会社は「#新型コロナで困っています」というハッシュタグ(検索目印)も用意している。

 城里町できのこを栽培する中川幸雄さん(61)は、売り上げの大半を占める道の駅などの直売所が休止したのをきっかけに、もともと利用していたポケットマルシェへの出品を大幅に増やした。

 月平均10万円以下だったアプリでの売り上げは、4月に100万円を超えた。結局、直売所で見込んでいた売り上げの大部分をまかなうことができ、3月から5月の間の減収は例年の5%程度に抑えられそうだ。

 中川さんは「今後は一般の消費者だけでなく、業務用の需要にもオンラインで応えられるようにしたい」と意気込む。(鹿野幹男、伊藤良渓、大谷百合絵)

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