第5回異様に高い運用成績の投資顧問に、「こりゃいかん」
大鹿靖明
企業監視20年⑤
「知り合いに佐々木さんに話したいことがある人がいまして……」。金融庁検査局審議官に就いていた佐々木清隆は2011年、役所の外に築いた人脈を通じてAIJ投資顧問の異様に高い運用成績を知った。「おかしな投資顧問があるんです」。聞いてオヤッと思った。「こりゃいかん」
かつては審査のすえ参入が認可された投資顧問業の運用業務は規制が緩和され、財務局に登録すれば参入できるようになった。投資顧問業者の数は急増したがノーチェックに近かった。AIJは顧客の年金基金に高い運用成績を実現していると報告しつつ、実際は任された資金をほとんど消失していた。
規制を緩めれば、新しい業者が現れたり、新サービスが生まれたりしてビジネスは活況を呈する。しかし副作用も生む。米国のベンチャー市場をまねて赤字企業でも上場できるようにしたら、誕生したのがライブドアだった。規制を緩和して自由度が増したとき、どう規律を保つか。監視役に突きつけられる課題だ。「『お作法』が分かっている従来の金融業者から、極端に言えば犯罪集団に近いところまで相手にしなければならず、これは難しいですよ」
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