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 都内の公立学校が再開された1日、葛飾区立立石中学校(同区立石6丁目)の全校生徒368人に、手作りマスクが贈られた。学校のない約2カ月間、給食を調理する職員6人が、子どもたちの喜ぶ姿を思いながらマスクを縫い続けてきたという。そして、調理職員の思いは学校から地域全体へと広がっていった――。

 学校の休業で仕事がなくなった調理職員らが、何か子どもたちのために、と申し出たのがきっかけだった。家庭科教諭だった湯通堂(ゆつどう)由加里副校長が型紙を作り、自宅でストックしていた布を提供。先生たちも総出で布を裁断した。

 家庭科室からミシン6台を校内の和室に持ち込み、縫い続けた。立体縫製で手間がかかり、1時間かけても2~3枚しか作れなかったが、「学校再開までに」を合言葉に生徒全員分、約400枚を縫い上げた。同校の上田亜紀・調理主事は「子どもたちと会える日を楽しみに縫いました。喜んでもらえると、うれしいです」と語った。

 調理職員のマスクづくりに刺激を受けた先生たちは、生徒全員のフェースシールドを作製した。B4サイズのラミネートフィルムをシールドに使い、額の当たる部分にはスポンジテープを貼った。

 さらに、協力の輪は、学校での取り組みを知った地域全体に広がった。保護者や校区の人たちから「再開したら使ってほしい」と、除菌用のアルコール液や、タオルを切るなどした拭き取り用の布が、山のように提供された。

 黒沢晴男校長は20年ほど前まで同校の体育教諭で、いまの保護者の中に大勢の教え子がいるという。そんな関係もあり、支援の輪が一気に広がった。

 1日、子どもたちが学校に戻ってきた。飛沫(ひまつ)の飛散を防ぐために、大声を出さないよう指導しているが、それでも時折、校舎からは歓声が聞こえた。「子どもの声が響いてようやく、校舎に命が吹き込まれました」と黒沢校長。湯通堂副校長は、「会えなかったことで、地域と学校との絆が深まったように思います」。

 拭き取り布だけで段ボール20箱、約6千枚が瞬く間に集まった葛飾区立立石中学校。下町の情の厚さと団結力を示した。(抜井規泰)