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 石巻市の阿部暁子(あきこ)さん(43)は朝から気が重くなった。長女の小学1年生、日菜穂(ひなほ)さん(6)が「学校行きたくない。やだ、やだ」と、ぐずったからだ。

 3月に幼稚園を卒園し、4月9日に小学校の入学式を迎えた。ところが、3日間通っただけで休校に。この2カ月半のほとんどを家の中で過ごしてきた。

 学校が始まらなくても、「学ぶ習慣は身につけさせたい」と暁子さんは長女に、民間が催すオンライン課外授業を体験させた。最も熱中したのは紙飛行機作り。ネット上で選んだ型紙を印刷して折り曲げ、好きな色を塗って部屋の中で何度も飛ばした。

 でも家中心の生活は、どうしても単調に。幼稚園のときは体を動かすのが好きな子だった。暁子さんがママ友とフラダンスを楽しんでいるのに憧れ、「私も」と5歳で始めた。駆けっこも得意だ。それが、妹2人とリカちゃんごっこか塗り絵をするか、子ども向けのテレビを見る時間が増えていった。見かねた暁子さんが「外で縄跳びやろう」と促しても、「私、動くの嫌いだし」と続かない。

 この日午前7時半、近くの5年生の女の子に先導され、同じクラスの3人と登校した。学校までの約10分間、会話はなかった。

 ところが、教室に入ると笑顔を見せた。「マスクで顔が隠れてしまい、みんな友だちの顔と名前を覚えるのが大変でした」と、担任の及川ゆかり先生(47)。休み時間になると、隣の子たちと折り紙を始め、四つ葉のクローバーを折った。

 給食のあとは、初めての掃除の時間。2人1組で机と椅子を教室の後ろに運ぼうとするが、重すぎてなかなか動かない。日菜穂さんは、黒板係になった。てきぱきと黒板消しをクリーナーにかけ、及川先生に「次は何したらいい?」「次は?」と畳みかけた。

 午後2時。日菜穂さんが友だちと走りながら、自宅に帰ってきた。暁子さんを見つけると、抱きついた。「学校、どうだった?」。母が尋ねても、「絶対、教えなーい」。でも、間を置いて、こう言った。「楽しかったよ」(岡本進)