[PR]

 新型コロナウイルスの影響で収入が半減した中小企業や個人事業主に助成する国の「持続化給付金」。個人事業主には最大100万円支援するが、税の申告のやり方が違うために支援の対象外になる人が続出し、国が対策に乗り出した。

 「6月に入る収入はほぼ0です」。そう話すのは、全国展開の音楽教室でピアノ講師として働く秋田県内の女性。小学生ら数十人を指導し、これまで月約10万円の収入があった。しかし新型コロナの影響で2月下旬以降、レッスンがほぼなくなり、歩合制の収入も激減した。

 音楽教室とは年に1度、委任契約書を交わしてきた。従業員ではなく個人事業主の扱いであるため、長時間労働を制限する労働基準法は適用されず、社会保険もない。個人事業主の収入は本来「事業収入」として自分で確定申告しなければならないが、この音楽教室では従業員と同じように給与所得の源泉徴収票が発行され、申告しなくてもすんだ。

 持続化給付金の申請ではこの点が問題になった。この制度で給付対象となるのは「事業収入」の減少者だが、女性の場合は「給与所得」と判断されたためだ。女性は給付金のコールセンターに何度も問い合わせたが「給与なので申請は難しい」との一点ばり。収入はピアノ講師の仕事だけであるため、給付金がもらえなければ生活は立ちゆかなくなる。「税務申告の仕方が違うだけで、もらえる人ともらえない人がいるのはおかしい」と女性は憤った。

 全国約1万4千人の講師がいる音楽教室側は取材に対し「契約上は個人事業主への報酬で、給与として支払っている認識はなかった」と回答。報酬を給与所得として支払ってきたことについては「確定申告や年末調整をする講師の手間をはぶくために続けてきた」と答えた。

 女性のような事例は全国で多発して問題化。経済産業省は5月22日、収入を給与所得などと税務申告してきたために給付を受けられなかった人も、新たに給付対象に加え、6月中旬にも申請ができるようにすると発表した。持続化給付金の申請が始まって1カ月。ようやく救済策が見えたことに、女性は「ほっとした。できるだけ早い給付を望みたい」と話した。

 一方、個人事業主が給与所得を受ける形態について、実態に即して見直す必要性も指摘されている。

 税金関連の動画を多数配信している田淵宏明税理士(大阪)は「給与として申告すれば、講師が給与所得控除を受けられるメリットもあるが、実態は個人事業主。事業からの収入として正しく処理しておくべきだった」と指摘する。女性のようなケースはほかにもあるといい、給付金対象外になった個人事業主からの相談が多数寄せられているという。

 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」などベストセラーがある山田真哉公認会計士(東京)は「学習塾や予備校などでも同様のケースがあると聞く。企業側にメリットはあまりなく、慣行として長年続いてきたのではないか」と分析した。(曽田幹東)

 持続化給付金 新型コロナウイルス感染症で経済的影響を受けた事業者に支給する制度で5月1日から申請受け付けが始まった。今年1~12月のいずれかの月の売り上げが前年同月比で半減したことを条件に、最大で中小企業に200万円、個人事業主に100万円を給付する。ただ、売り上げは税務申告上の「事業収入」で判断され、売り上げを「雑所得」や「給与」で申告していた場合、対象から漏れていた。

関連ニュース