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 政府が旗を振るインバウンドや地域のイベントを下支えしてきた貸し切りバス業界に、強い逆風が吹いている。新型コロナウイルスの影響で訪日外国人は激減し、国内輸送の需要が高まると見込まれた東京五輪も延期に。茨城県内では、事業資金を確保するために車両を売る業者も出てきた。

 売り上げの半分以上を訪日外国人客の輸送が占める古河市の「総和観光」では、1月下旬から予約のキャンセルが相次ぐようになった。中国やタイの旧正月に来日するはずだった観光客のツアーは次々と中止。例年なら5千万円ほどを見込む4月の売り上げは、元々やっている住宅団地の通勤客の送迎などで得られた約120万円だけだった。

 運行する車両の多くはリース契約で、費用は毎月約1千万円かかる。融資の返済や、従業員への給与の支払いも続けなければならない。手元の資金が逼迫(ひっぱく)し、32台あった車両のうち自前で持っていた5台をやむなく売却した。雇用調整助成金や持続化給付金を利用することにしているが、支出をまかなうだけの金額は見込めない。金融機関からさらに融資を受けるための手続きもしている。

 同社の田続(たつづき)幸雄社長(59)は「五輪で業界にとって特需の年になるはずだったのに」と硬い表情を浮かべる。オンライン取引やテイクアウトで苦境をしのぐ動きが目立つ小売りや飲食業と異なり、減収を食い止める活路も見いだしにくいという。「海外からお客さんが来日できるようになるまで、できることはほとんどない」

 116事業者が加盟する県バス協会が実施したアンケートによると、県内の貸し切りバス事業の収入は3、4月とも7割以上の減。路線バスなどの事業を兼ねている事業者は一部で、8割近くが観光や学校行事などを収入源とする貸し切りバス専門の業者だ。県内には、地方創生臨時交付金を活用し、バス業者を支援する自治体も出てきたが、大半が路線バスを対象にしたものだという。

 協会の副会長を務めるサワキ観光(八千代町)の沢木民夫社長(70)によると、貸し切りバス業者の中には、路線バスが走っていない地域で、住民やPTAと契約して通学や通勤の足になっている業者も少なくないという。同社の売り上げも、学校行事や企業の研修の中止が続いた影響で、4月は4割ほど落ち込んでいる。「直接の金銭的な支援とまではいかなくても、政府には、感染収束後に修学旅行や地域の団体旅行を安くするなどといった施策を考えてほしい」と話す。(久保田一道)