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 100刷、145万部。今も大学の教科書に使われるという梅棹忠夫『知的生産の技術』。個人が情報社会に向き合うための「知的武装」を説いた同書をたよりに、本や新聞から一文を抜き出し、カードに書き付けた人も多いのではないか? 刊行から51年たち、伝達手段の多様化、フェイクニュースなど、曲がり角に立つ情報社会の中で、梅棹が発したメッセージは私たちをどこへ導こうとしているのか。

拡大する写真・図版雑誌に「情報産業論」を寄稿して、ほどなくしたころの梅棹忠夫。書斎の整理法など、合理的生活術が評判になっていた=1963年6月、京都市内の自宅

 ――ハウツーものじゃないか。知的生産って一体何だ?

 東京都千代田区の岩波書店。社長ら10人ほどが居並ぶ会議の席で、苦言が続いた。

 元編集者の小川壽夫(ひさお)さん(85)によれば、1968年前半ごろのことである。その3年前からPR誌「図書」に連載され話題を集めた「知的生産の技術について」の新書化は保留にされてしまった。

 「学術研究の成果を啓蒙(けいもう)する当時の新書の常識としては、確かに異色でしたから」

知識の貯蔵、分類ではなく、組み替え

 京都帝大で動物学を学び、内モンゴルやアフガニスタンでの調査から民族学に転じた梅棹忠夫は、57年の「文明の生態史観序説」で注目された。次いで63年には工業化の次の時代を予測した「情報産業論」が反響を呼んだ。

 「知的生産の技術について」は、その新しい時代に個人がどう向きあうか、「知的武装」の方法を提案したものだった。たとえばカード。目的は知識の貯蔵でも分類でもなく、組み替えであり、そこに創造が生まれる、というふうに。

 「ハウツーのつもりはない。学…

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