[PR]

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、小中高の子どもたちが関わるスポーツの全国大会や音楽コンクールのない夏が始まろうとしている。鳥取県内では、独自の大会開催や成果発表の場づくりに向けて関係者や教員らが動きつつある。県内の吹奏楽部は多くが小編成で、1人が複数の楽器を持ち替えるなど工夫して曲を奏でてきた。いつもの年と違う夏、そんな吹奏楽部の今を訪ねた。(斉藤智子)

     ◇

 毎年夏に開かれる全日本吹奏楽コンクールの県大会には25人以内の「小編成」部門があり、昨年は出場73団体の半数を超える40団体がエントリーした。全国大会に小編成部門はないが、県大会で優れた演奏をした団体が県代表として推薦される中国大会が目標となっている。今年は、全国、中国大会に続いて県大会も中止が決まり、プロの審査員の講評を受けられる貴重な機会も失われた。

 全校生徒40人の江府町立江府中学校の吹奏楽部は2、3年生の8人。少ないからこそ、一人ひとりが担当する音の大切さを実感する場面が多いという。部長でホルン担当の加藤花奈(はるな)さん(3年)は「『中国大会に行きたい』と練習してきた。県大会で演奏して、緊張しながら賞状をもらうあのステージに立ちたかった。ショックが大きくて、モチベーションが上がらなくて」。副部長でテューバ担当の大岩美音(みお)さん(3年)も「音源だけでもプロの先生に聞いてもらえないのかな」と心残りがある。

 部は町に約500年続くとされる夏祭り「江尾十七夜」で演奏するのが恒例で、町の文化祭出演などで地域に親しまれてきた。今年は新型コロナウイルスの影響で江尾十七夜の祭り自体が中止に。3月に予定していた定期演奏会も2度延期し、まだ開催できずにいる。顧問の北垣球(まり)教諭は「対策をして定演は開催して、応援してくれる地域の人たちに聞いてほしい。音楽にはコンクールで測れないものがいっぱいある。やっていてよかった、と部員が思える場をつくるのが僕たちの役目かなと思う」。

 部員たちは話し合いを重ね、気持ちを切り替えようとしている。5月25日から本格的な練習ができるようになり、今の目標は、支えてくれる人たち、いつも声をかけてくれる町の人たちに感謝の気持ちを伝える演奏をすること。3年生には部を引退する時が来るが、加藤さんは「伝えることを全部伝えて終わりたい」と話した。

     ◇

 「意識高く!」「意識高く!」。かけ声に続いて、パン、と一拍、手を打ち鳴らすと、空気が心地よく張り詰める。倉吉北高校(倉吉市)の吹奏楽部の部活の始まりの合図だ。昨夏、県代表として出場した中国大会後に当時の3年生が引退すると、部員が6人だけになり、「なあなあにならないように切り替えよう」と採り入れた。1年生10人が入部して16人の新体制になった今も続けている。

 部長の山本瑞希さん(3年)はトランペット。「中学の時と違って部員が少ないので、一人の責任が大きい」。足りないパートを補い合うため、曲によってはかなり考えるという。今は2チームに分かれてアンサンブルに取り組んでいる。

 県中部地区では、中高の音楽関係の教員らが、成果発表の場を検討しているという。山本さんは話す。「コンクールがすべてじゃないけど、一つの標準で目標だった。目に見える本番や目標がない中だけど、みんなでやる音楽は楽しいし、たくさんの方に支えられて部活ができていたこと、お客さんに伝えられることのありがたさを実感した。本番の機会を先生方も考えてくださっているので、それをモチベーションに頑張っている」

 部では、音楽室前に生徒に楽しんでもらえる掲示をするアイデアも出し合っており、新型コロナウイルスの影響で歌う機会が少ない校歌を「可愛くデコる」案や音楽クイズの案などが出ているという。