伊藤舞虹
親の虐待などを理由に児童養護施設で育ち、高校卒業を機に「自立」を迫られた若者たちが、新型コロナウイルスの影響による収入減で苦境に立たされている。親を頼ることができない一方、未成年であることなどを理由に行政の支援策にもつながれないケースが出ているからだ。将来への希望に満ちたはずの春に、若者たちが孤立と絶望を深めている。
拡大するACHAプロジェクト代表の山本昌子さん。児童養護施設や里親家庭の出身者に食料品などを届けている=本人提供
東海地方の専門学校に通う女子学生(18)はこの春、約10年間暮らした児童養護施設を巣立ち、4月からアパートでの一人暮らしを始めた。
高校時代から施設を出た後の生活を見越し、2カ所の飲食店でのアルバイトを掛け持ちして、少しずつお金をためてきた。将来は自分と同じような境遇の子どもたちのために働きたいという夢があり進学。専門学校の入学金や学費、新居の費用などで100万円強あった貯金の多くを使ったが、アルバイトを続ければ生活できる見込みだった。
ところが3月後半から店が営業を自粛して出勤できなくなり、4月分の収入はゼロに。「施設を出る時はこんなことになるなんて想像もしなかった」と話す。
慌てて別のアルバイトを探したが、1日4、5件の面接を受けても雇ってくれる店は見つからなかった。貯金を切り崩す日々に不安が募り、食事は1日1食に。30円のうどん1袋を半分だけ食べてしのいだ日もあった。空腹で動く度にめまいがした。
インターネットなどで支援策を調べるうち、新型コロナの影響で収入が減った人に最大20万円を無利子で貸し出す「緊急小口資金」の制度があることを知り、生まれて初めて社会福祉協議会にも足を運んだ。だが、「未成年は親の同意が必要」という。親からは過去に虐待を受けており、今も頼れないため事情を説明したが、対応した職員は「法定代理人の同意が必要で、裁判所の手続きに3カ月ほどかかる」。諦めざるを得なかった。
他に利用できる制度がないか、…
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