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 北方四島のビザなし交流事業で、新たな課題が浮上している。新型コロナウイルスの感染収束が見通せないなか、ロシア側が上陸にあたって検疫を求める可能性が浮上しているためだ。四島交流の再開に向け、日本政府は日ロ両国の法的立場を害さない検疫のあり方について検討を始めた。

 四島交流訪問や墓参などのビザなし交流事業は例年5月に始まるが、日本外務省は4月に当面の見合わせを発表した。ロシアの感染者数は累計で42万人を超え、今も収束は見通せていない。ロシア極東サハリン州のネットメディア「サハリン・インフォ」によると、5月には国後島で2人の感染者が確認された。色丹島にも接触者がいるとして、地元当局は一時、両島に緊急事態態勢を敷いた。

法的立場を害さない検疫検討

 「ロシア人もコロナに非常に神経質になっている。検疫問題が出てくると思うんです」。5月12日の参院外交防衛委員会で、日本維新の会の鈴木宗男氏は、ロシア側が訪問団に検疫を求めてきた場合の対応を質問した。外務省の担当者は「問題は認識している。交流をいかに円滑にできるか検討したい」と応じた。

 ビザなし交流事業は、主権をめぐる日ロ両国の「法的立場を害さない枠組み」の下で続いてきた。訪問団は外相が発行する身分証明書と、「挿入紙」と呼ばれる行き先を記した書類を持って四島に入り、ロシア側はそれらをパスポートと査証(ビザ)とみなす、といった工夫がなされている。

 検疫をめぐっても、ロシア側の手続きに沿えば、管轄権を認めることにつながりかねない。日本外務省関係者によると、検疫問題で日ロ間の協議はまだ始まっていないが、日本政府内ではすでに双方の法的立場を害さない方法を検討中だという。検疫を所管する厚生労働省の関係者は「ロシア側の検温や問診などに、訪問団が自主的に協力する形もあり得る」と話す。(佐藤達弥)

あす次官級協議

 日ロ平和条約交渉をめぐり、実務担当者に指名されている外務省の森健良外務審議官とロシアのモルグロフ外務次官が4日、電話協議を行う。両氏による次官級協議は昨年11月以来。5日には北方四島の共同経済活動に関する局長級の作業部会をテレビ会議形式で開く。

 茂木敏充外相が5月28日、ロシアのラブロフ外相との電話協議で、新型コロナウイルスの影響で中断していた事務レベル協議の早期再開で一致していた。