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 災害時の避難所で新型コロナウイルスの感染をどう防ぐか。埼玉県は、県内市町村向けに新型コロナに対応した避難所運営ガイドライン(指針)をまとめ、公表した。県によると、県内全63市町村のうち、少なくとも約8割にあたる51自治体が、避難所で発熱者とそうでない人を分ける対応策をとったという。

 感染症の予防や拡大防止を考慮した避難所運営について自治体が対応を進める背景には、新型コロナの終息が見通せない中、梅雨や台風シーズンを控え、備えが必要との判断がある。政府が4月7日付で各都道府県などに、新型コロナ感染症への対応を促す通知を出したこともある。

 県が5月29日に公表した指針はこの通知を具体化した内容だ。例えば「区画の間隔を2メートル以上あける」といった具合で、市町村が開設する避難所のレイアウトなども例示した。

 避難所の受付時に検温して健康状態を確認し、発熱などの症状がある人とそうでない人は使うスペースを分けるようにも求めた。県災害対策課によると、自治体名は明らかにしていないが、現時点で、少なくとも県内51の自治体が避難所に発熱者の専用スペースを設けて運用するという。

 また、政府は「可能な限り多くの避難所の開設」を図るよう求めており、県指針では、体育館が避難所となる学校では、空き教室の活用を提案している。

 このほか、新型コロナに感染して自宅療養中の患者が避難する場合は、管轄する保健所の指示により、ホテルなどの宿泊療養施設へ避難してもらうようにし、一般の避難所と分離するようにも求めた。しかし、各自治体が民間施設の協力を得て一定の部屋数を確保するにはある程度、時間がかかることが予想される。

 このため、県は、新型コロナ軽症患者らの宿泊療養施設として確保している約500室を、災害時に活用する方針。大野元裕知事は「市町村の態勢が整うまではセーフティーネットとして残しておきたい」としている。(釆沢嘉高)

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 新たな避難所対策をまとめた自治体の一つ、東松山市は、避難所が3密になるのを避けるため、災害発生時の一時避難先として、図書館など計9施設を新たに確保。計2千人を収容することができるようにした。

 同市は昨年10月の台風19号で、床上・床下浸水など大きな住宅被害に見舞われた地域の一つ。避難者はピーク時に3239人に上り、一部の避難所に集中したこともあった。市危機管理課は「台風19号被害の経験から避難者の分散が必要と考えた。結果、並行してコロナウイルスの感染防止対策にもなる」と話す。

 さらに、新型コロナの感染疑いのある避難者の専用スペースに使うことを想定し、縦横2メートル、高さ1・7メートルの簡易型避難テントを、秋ごろまでに130張追加する。現有と合わせて計235張にする計画だ。

 東松山市の森田光一市長は「今後、医師会とも相談しながら、引き続き避難所での感染症防止策を行いたい」と話している。

 吉川市も対策マニュアルをまとめ、5月28日に発表した。それによると、感染リスクの軽減を図るため、避難所の入り口で避難者を検温し、発熱などの症状がある場合、一般の避難者と動線と生活エリアを分けるなどの対策を講じる。避難後は家族単位で間仕切りをし、ほかの避難者との間隔を2メートル以上確保するといった具合だ。

 政府は避難所が過密状態になるのを防ぐため、「親戚や友人の家などへの避難」を検討するよう通知しており、市では、市民にはあらかじめ、親戚・友人宅、自宅の2階といった避難所以外の避難先を確保するよう呼びかける。

 市危機管理課は「夏の出水期に備えて、感染対策と避難の両立をめざした」としている。東松山、吉川両市とも関連対策費を補正予算案に盛り込み、6月定例会で審議する。(北崎礼子、米沢信義)

埼玉県がまとめた新型コロナ対応の避難所運営指針のポイント

▽新型コロナに感染した自宅療養中の患者はホテルなど宿泊療養施設に避難

▽指定避難所以外の臨時避難所の確保

▽避難所の居住区画は2メートル以上の間隔

▽発熱などの症状がある避難者とそうでない避難者のスペースを分ける

▽避難所受付時に検温し、健康チェック表で状態を確認