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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために休校していた学校が、各地で再開しています。喜ぶ子がいる一方、不安を抱えている子や、長期間の休校で生活リズムが崩れたり、ストレスをため込んだりしている子もいます。大人はどう向き合えば良いのでしょう。認知行動療法の第一人者で、精神科医の大野裕さん(70)に聞きました。

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 楽しみにしていた行事が中止になった。友だちと顔を近づけて笑ったりしゃべったりできない。元々不登校気味で、また学校に行くのがつらい――。

 長い休校が明け、子どもたちからそんな悩みが寄せられていると聞きます。しんどいですよね。突然家に閉じこもる生活が始まり、突然新しいスタイルの生活が始まったんですから。

 まず大人は、子どもと話す機会を増やしてください。子どもが困ったことや不安なことを、いつでも話し合える雰囲気を家庭の中で作ってあげることが大切です。どこにも居場所がないと感じた子どもが、ふと身を置ける居場所を学校に作ることも良いですね。

 子どもと話して不安やストレスに気がついたら、次は一度立ち止まりましょう。「まだ頑張れる」とストレスに気づかないふりをしたり、させたりするのは良くありません。

 そして、子どもがどうしたいのか考えを聞きましょう。大人が「こうあってほしい」と思う気持ちはひとまず置いて。何のために学校に行くのか。将来の夢、目標を考えるのも良いですね。そこまで整理できたら、今できることから行動していく。認知行動療法の考え方です。

 子どもが泣きながら大量の宿題に取り組んだ、学校再開後は進度の速い授業で疲弊している、という話も聞きました。

 保護者には、子どもが学校は楽しいと思えるような寄り添い方をしてあげてほしい。子どもによっては、オンラインの学びなど学校とは違う手段を考える必要があるかもしれません。

 ダブルスタンダードでいいんです。宿題なら「ここまで頑張ったから、この先は仕方ないね」と、ほどほどにやるのがポイント。全部できなくても仕方ない。お母さんが代わりに先生に叱られてあげるから、というくらいの姿勢がいい。

 学校の先生と話し合うことも必要です。国は熱中症対策のため、2メートル以上の距離があれば屋外でマスクを外すよう呼びかけました。このように少しずつ情報が増えていきます。学校と保護者はこういった情報を共有して、子どもが何かをすることに対する規制を少しずつやわらげられるよう話し合えると良いですね。

 正直なところ、私自身は数カ月程度の学習の遅れは長い目で見ればそこまで大きな影響はないように思います。実は私、高校時代に落第して高校1年を2回やっています。それから3浪して大学生になりました。学生運動が激しく、1年近く授業もなかった。それでも大人になれました。

 親から「勉強しろ」と言われるうちは、反発して勉強しませんでしたね。大人の皆さんもそうでしょう? 思春期の子どもは、大人から支配されていると感じやすい。子どもが自分でやろうという気持ちを大人がどう支え、刺激していくかが大事です。

 気をつけなければいけないのは、保護者も一人でストレスを抱え込まないことです。長い休校に続く学校の再開は、親にとっても大きなストレス。ストレスがある状態で何か問題が発生して一人で悩むと、心の中でどんどん問題が大きくなり、冷静な判断ができません。家族、友だち、いろんな人と話をしてください。

 今まで出来ていたことが突然できなくなる。普通だと思っていたことが、簡単に覆って普通でなくなってしまう。コロナ禍で多くの方がそう感じたのではないでしょうか。

 学校が始まって子どもが不安を感じるのは、自然なことです。不安の気持ちは自分を守るために必要で、悩みや不安はこの先の希望でもあります。子どもが自分にとって大事なものを見失わず育っていけるよう、保護者がサポートできると良いですね。(聞き手・山根久美子)

プロフィール

 おおの・ゆたか 1950年、愛媛県生まれ。国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター顧問、認知行動療法研修開発センター理事長。朝日新聞社と開発中の、スマートフォンでAIを活用したストレスケアアプリ「こころコンディショナー」を監修。著書に「こころが晴れるノート」など。

14日にオンラインイベント

 朝日新聞社は6月14日午後3時半から、オンラインの無料イベント「学校再開、子どもの心にどう寄り添う? 専門家に聞く」を開きます。新型コロナウイルスの影響で休校していた学校が再開されるなか、ストレスを抱える子どもの心にどう向き合うか。保護者からの疑問や悩みを受け付け、朝日新聞記者の山根久美子と金澤ひかりが専門家に投げかけます。

 回答者は大野裕さんと、学校になじめない生徒のための「居場所カフェ」を導入した大阪市立市岡中学校長の西川孝治さんです。

 参加登録は12日(金)正午までに、専用サイト(https://ciy.asahi.com/ciy/11001759?revision=LIVE?cid_asahi別ウインドウで開きます)で受け付けています。