リアルタイムで生物の進化観察 津波被災地は貴重な現場

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小坪遊 米山正寛
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 東日本大震災の津波を受けた沿岸で、遺伝的な多様性が震災前より増した生きものが見つかっている。一変した環境のもとでどんな現象が起きていたのか。進化のなぞの解明や生物多様性の保全に役立つヒントが得られる可能性がある。

 川にすむ数センチの小さな魚イトヨと、海で成長して繁殖のために川に戻る近縁種のニホンイトヨ。両種の交雑で生まれた子孫が、岩手県大槌町の沿岸に津波後にできた池で、詳しく研究されている。交雑はまれにしか起きないが、津波の攪乱(かくらん)で生息環境が一時的につながった可能性がある。

 面白いのは池ごとの違いだ。淡水性のイトヨは、エラにあるくし状の器官「鰓耙(さいは)」の数が少なく、底生の昆虫などを食べる。ニホンイトヨの鰓耙は、それより細かく数が多い。17カ所の池で交雑系統の子孫を調べると、鰓耙が多い個体や少ない個体の割合が池によって違った。

まるでガラパゴス諸島、再現実験も

 鰓耙の数は、遺伝の影響を受けやすい形質。池ごとに異なるのは、遺伝的な多様性のあらわれとみられている。集団内にこうした違いが生まれ、受け継がれていくことは、進化のプロセスにほかならない。大槌町の池の一つひとつは、島ごとに生き物が独自の進化をとげたガラパゴス諸島の島にたとえられる。

 ただ、なぜ多様化したかは…

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