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 奈良公園(奈良市)のシカはこのところ、おなかの調子が良くなってきたらしい。「黒豆」にも例えられる黒くて丸いふん。近年はその形がゆるかったのだが、また元の「黒豆」に戻ってきた。新型コロナウイルスの影響で観光客が減ったことが原因のようだ。

 コロナ禍の前、奈良公園では観光客がシカに鹿せんべいを与える姿がそこかしこで見られた。「特に東大寺など人が集まる場所では、鹿せんべいの食べ過ぎでふんが下痢気味になっていたかもしれない」と指摘するのが、シカの保護活動に取り組む「奈良の鹿愛護会」の蘆村好高(あしむらよしたか)事務局長だ。

 蘆村さんによると、せんべいの原料は小麦粉と米ぬか。シカの主食は草や木の実で、鹿せんべいは「おやつ」のようなもの。鹿せんべい自体は栄養があるが、食べ過ぎるとのどが渇き、水を飲みたくなるようだ。

 蘆村さんは「インバウンドの増加で鹿せんべいが大量に消費され、個体によっては水をいっぱい飲みすぎていたのでは」と話す。

 実際にインバウンド(訪日外国人客)は増えていた。奈良県の推計では2018年、258万人が県内を訪れた。12年の28万人と比べると10倍近い。

 そのインバウンドがコロナ禍で一気に減った。観光庁が発表した今年4月の全国の訪日外国人客数は前年同月より99・9%減の2900人。記録的な下落となった。

 40年来、奈良公園に通っている奈良市の高木敏治(たかきとしはる)さん(76)は最近、ある変化に気づいた。

 「ここ数年は下痢気味でべちゃっとしたシカのふんが多かったが、3月ごろから、俳優の吉永小百合さんが『奈良の春日野』で『黒豆』と歌ったようにコロコロと丸く、健康的な形に戻ってきた。においも弱くなりました」

 愛護会もここ数カ月は下痢気味のふんが減ってきたと感じている。蘆村さんは「おやつ程度に食べる分には問題ないのですが。何事もほどほどが大事ですね」と話した。(根本晃)