仲見世の玩具店、百年余の歴史に幕 コロナ禍で踏ん切り

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池田良
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 東京・浅草の仲見世商店街で100年余にわたり続いた「稲葉玩具店」が5月末、コロナ禍の中で静かに幕を下ろした。緊急事態宣言の解除後にいったんは再開したものの、4代目店主の稲葉克彦さん(78)は店じまいを決断した。「自分の代で歴史を閉ざすのはつらいけれど、浅草や商店街の仲間に感謝です」

 浅草寺の参拝客や訪日外国人らが足を止め、おもちゃの刀や太鼓、キャラクターのお面やプラモデルなどを買い求めてきた。「親子3代で足を運んでくれる近所の常連さんもいたよ」

 だが、コロナ禍で客足が途絶え、商店街の光景は激変。稲葉さんも2月の売り上げがほぼ半減し、3月中旬から臨時休業した。「後継ぎもなく、先行きが厳しい中で踏ん切りがついた」

 在庫の玩具は子どもたちに届けてもらおうと、すべて慈善団体に寄付することにしている。片付けに精を出す稲葉さんのもとに駆け寄る近隣の商店主らに、不用になった店内の棚や備品を譲った。「個人事業主が多い街。仲間たちの苦境はまだまだ続く。国にはさらなる支援を求めたい」

 仲見世商店街振興組合によると、ほかにも1店が閉店し、現在は85店になった。冨士滋美理事長(71)は「複数の店舗が同時期に店を畳むのは珍しい。同じ店子の仲間がいなくなるのは寂しさがある」と話す。「関東大震災東京大空襲など、歴史をたどれば、この街は『七転び八起き』の繰り返し。コロナ禍もみんなで何とか乗り越えて、浅草に活気を取り戻したい」(池田良)

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