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 猿沢池(奈良市)にほど近いホテルサンルート奈良が今月、「ホテル尾花」に名称を変えて再スタートを切った。映画が上映できるよう大型スクリーンを新設し、かつてこの地にあった映画館「尾花劇場」を「復活」させた。中野聖子(さとこ)社長(51)は「地元の方に懐かしいと喜んでいただいています。感無量です」と話している。

 中野さんによると、尾花劇場はもともとは明治30年代には開業していたとされる芝居小屋「尾花座」だった。歌舞伎や落語などが上演されたが、中野さんの曽祖父が買収し、大正期の1920年に映画館「尾花劇場」に変えた。人気作を上映し、奈良の人たちから娯楽の場として愛された。戦後まもなく上映した「愛染かつら」では猿沢池まで行列ができたという。

 だが、テレビの普及に伴い来館者が減少。中野さんの父重宏さん(92)は79年に尾花劇場を閉め、81年にホテルサンルート奈良に衣替えした。幼い頃から映画が好きで「字幕で漢字を覚えた」という中野さんは「悲しすぎて当時の記憶がないんです」と振り返る。

 2011年に中野さんがホテルの社長を継ぎ、国内外の客を迎えてきた。今年、尾花劇場のオープンから100周年を迎え、サンルートホテルチェーンとの契約が終了することから改名を決意。1階会議室に大型スクリーンを設置した。7月ごろに「尾花座復活上映会」と銘打って、奈良ゆかりの映画を上映できないか検討している。

 「新型コロナで県民の方々の宿泊が増えてきている。この機会に地元で豊かな時間を過ごしていただければ」と中野さん。「顔見世(かおみせ)プラン」として、10月末まで県在住・県出身者向けに宿泊料を最大で3分の1に割り引く。ホテル尾花(0742・22・5151)。(根本晃)