拡大する写真・図版スーダンの首都ハルツームで、自由や民主化を求めてデモをする人々。女性の姿も目立った=2019年4月19日、中野智明氏撮影

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 アフリカや中東などの一部の国では、女性器の切除が長い間、慣習として続いてきた。今回、その禁止に踏み切ったのがスーダン。長期支配を続けた指導者が失脚して発足した暫定政権が、「人権侵害」と非難してきた欧米との関係改善などを図ったとみられる。すんなり浸透するのだろうか。(ヨハネスブルク=石原孝)

女性器切除
女性の外性器の一部または全体を切り取る行為。女子割礼とも呼ばれる。数千年前から続くと言われ、東南アジアのインドネシアや南米のコロンビアでも報告されている。出血が続くことで感染症や不妊に苦しんだり、死亡したりする女性もいる。国連総会は2012年、人権侵害として女性器切除を禁止する決議を採択した。

「大人になるため」 女性の87%が経験

 「女性器切除の禁止は素晴らしい決定。多くの女性が喜んでいる」。スーダンの首都ハルツームに住む大学生は、朝日新聞の電話取材に喜びを隠さなかった。

拡大する写真・図版スーダンはここにある

 英BBCなどによると、スーダンの暫定政権は4月末に刑法を改正し、切除をした者に最大3年の禁錮刑と罰金を科すことを決定した。外務省は「(今回の決定は)社会に深く根ざした慣習を終わらせる大きな一歩になる」との声明を発表した。

 これに対し、禁止を求めてきた国連児童基金(ユニセフ)は「画期的な進展」と評価したうえで、「女性器切除は有害であり、少女たちにとって肉体的にも精神的にも深刻な結果をもたらすものだ」と訴えた。

拡大する写真・図版スーダンの首都ハルツームで、自由や民主化を求めてデモをする女性ら=2019年4月24日、中野智明氏撮影

 ユニセフが2016年に出した報告書などによると、スーダンでは15~49歳の女性の87%が女性器の切除を経験していた。「性欲を抑えて貞操を守る」「結婚するために必要」「大人になるための儀礼」などとして行われていた。

 ただ、術中に大量に出血したり、感染病を患ったりするケースが少なくない。欧米諸国を中心とした国際社会は「人権侵害だ」と批判してきた。スーダン国内でも、切除に反対する声が徐々に高まっていたが、状況はすぐには変わらなかった。

 転機となったのは、スーダンで30年にわたる強権支配を続け、禁止措置に後ろ向きだったバシル前大統領が昨年4月に解任されたことだ。バシル氏の失脚につながった大規模デモでは、男性と比べて教育や職業の機会が限られてきた大勢の女性が参加し、自由や公平を求めた。

 その後発足した軍と文民組織による暫定政権は、民主化に向けた取り組みや、前政権時代に対立していた欧米諸国との関係改善を模索。女性器切除の禁止もその一環とみられる。バシル氏についても汚職と外国通貨の違法所持などの罪で訴追に踏み切った。

 ただ、切除の禁止がすぐに浸透するかはまだ見通せない。複数の現地住民によると、性の話題をタブー視する家庭は今も多く、女性器切除について公に話題にする機会は、ほとんどないという。住民の1人は「切除が禁止されても、慣習が根強い地域ではしばらくは闇で行われる恐れがある」と心配している。

■慣習根強く 闇で…

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