[PR]

 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」。命にかかわる万が一の時、どんな治療やケアを受けたいかを、事前に家族や医師らと話し合っておくプロセスのことだ。厚生労働省は「人生会議」の愛称をつけ、普及をめざす。コロナ禍をめぐり、熊本県・天草郡市医師会(酒井一守会長)は会員の開業医らに「人生会議」の実施を呼びかけている。

 同医師会会員で「在宅とつながるクリニック天草」院長の倉本剛史さん(45)によると、終末期医療では、容体が急変した際の延命治療などの希望をあらかじめ書面に残す「事前指示書」(AD)がある。一方、「人生会議」は最期の時に備え、前もって患者の人生観も含め、大切なことを話し合い、伝えておく過程に重きを置く。

 同医師会長名で5月12日付で出された文書は「『緊急・人生会議』のお勧め」と題し、機会をとらえて、あらかじめ「人生会議」を開くことを要介護、要支援の高齢者の主治医らに求めている。

 新型コロナの爆発的な感染拡大で、事実上の医療崩壊が起きた欧米では人工呼吸器が足りず、現場で生存する可能性がより高い患者を優先する「命の選択」を迫られる事態が起きた。

 高齢者は体力、免疫力が低下しているため、新型コロナウイルスに感染すると急激に重症化することがある。タレントの志村けんさん(享年70)が肺炎の診断からわずか9日後になくなった。

 「自分の人生の最期」について家族らと事前に話し合うことは必要だろうが、大半の人たちにとって死をわがことと受け止めるのは難しい。そこでコロナ禍を機に、重症化した患者とコミュニケーションが取れない状況への備えとして、「人生会議」で話し合う機会が大切というわけだ。

 同医師会は「人生会議」を始める道具として2017年、「わたしのノート」を作った。B5判25ページで「わたしの歩んできた人生」「わたしが受けたい医療・介護」など4章構成。倉本さんや同医師会副会長の中村修さん(66)は天草地域の老人会や勉強会などで「人生会議」の講演をする際などに配布している。

 倉本さんは「自分の生き方や大切な家族への感謝、もしもの時の心構えなどを大切な方々と話し合うこと。コロナ禍を『人生会議』を開く一つのきっかけにしてもよいのでは」と話している。「わたしのノート」は無料。問い合わせは同医師会(0969・22・2309)へ。(大矢雅弘)