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 梅雨入りした地域もあり、豪雨災害が懸念されるなか、「新型コロナウイルスが怖くても避難を」と呼びかける動きが広がっている。先月、九州で降った大雨では避難者がゼロだった避難所もあり、自治体も感染対策とともに周知を強化している。

 前線が停滞した5月16日は、熊本など九州5県の10観測地点で、5月の24時間雨量記録を更新する大雨となった。

 熊本県美里町はこの日の午前9時、高齢者や障害者ら避難に時間を要する人向けに避難を呼びかける「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を全町民約9800人に出した。ところが計4カ所の避難所に避難した町民はゼロだった。町の担当者は「新型コロナの感染対策を進めていたが、感染への懸念が影響したかもしれない」と振り返る。

 町は新型コロナ流行下でも災害リスクのある地域の住民には適切に避難してもらおうと、「感染症対応避難所開設及び行動マニュアル」を独自につくり、4月下旬から全戸に配布。例年は開設していなかった町の総合体育館を使うなど、避難所の「3密」を改善する取り組みも進めてきた。

 今年初の避難所設置となった5月16日も防災無線で避難を呼びかけ、体調不良の避難者がいないか確認する受付も設けたが、避難情報を解除するまでの8時間で誰も避難所に来なかった。

 マニュアルでは親類宅への避難も検討するよう記入しており、担当者は「きちんと避難してもらえた可能性はある」としつつ、「体調不良の方のスペースの不備など、実際に開設したことで課題も見えた。町民に安心して避難所に来てもらえるよう、対策と周知を進める」と前を向く。

 被災者支援に取り組むNPO法人「YNF」(福岡市)は「新型コロナ感染拡大下でも避難行動は必要です!」と呼びかけるポスターをつくり、5月17日にSNSなどで発信を始めた。

 土砂崩れや大規模な浸水の恐れのある地域か事前にハザードマップで確かめ、避難場所やルートも確認するよう呼びかける内容だ。

 監修した久留米大医学部看護学科長の三橋睦子教授は「避難所が怖いという理由で避難しない人が増え、災害の犠牲者が増えることが懸念される」と話す。

 長年、感染症看護や災害看護を研究してきた三橋さん自身も「新型コロナの感染力や病状には恐怖を感じる」と明かしたうえで、「多くの人が自然災害以上に新型コロナへの感染リスクを自分ごととして感じているのかもしれない」と指摘する。

 そのうえで「土砂災害や浸水で被災する地域では、コロナに感染するより命を落とすリスクが高い。冷静に判断するためにも、事前に災害リスクを確認し、確実に避難を」と訴える。

 内閣府も5月18日、「新型コロナが収束しない中でも危険な場所にいる人は、避難が原則」と呼びかけるポスターを公開した。

 自宅が安全な場合は避難場所や避難所に行く必要はないとしつつ、より安全な親戚や知人宅に避難することや、やむを得ず車中泊避難をする場合には浸水しない場所かなどを確認することを呼びかけている。(竹野内崇宏)