拉致問題を身近に感じて 横田滋さんしのぶ家族写真展

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斎藤博美
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 北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父で、5日に87歳で亡くなった滋さんは、たくさんの家族写真を撮影していた。その写真は、全国各地で開かれた写真展で多くの人の目に触れた。写真展を提案したのは、横田家が暮らす川崎市マンション住民で作る支援団体「あさがおの会」。めぐみさんが拉致される前の何げない日常を切り取った写真の数々は、拉致が「誰もが被害者になりうる」事件だったことを訴え続ける。

 7日。マンションのロビーに、滋さんが撮影した家族写真や拉致問題と闘い続けた活動を振り返る写真などが、「あさがおの会」のメンバーによって展示された。近隣住民向けに用意された滋さんをしのぶ場で、一般には公開されていない。

 「全国に広がった写真展の始まりはこのロビーでした」。2003年の設立時からのメンバーである田村照美さん(73)は言う。めぐみさんの写真の話を滋さんにすると、撮影時の思い出を語ってくれたという。

 例えば新潟で撮った正月の晴れ着姿。「あのときは雪が降っていて寒くて…」。記憶は細部にわたり、日本酒を飲みながらにこにこと語った。そして必ず「いつも待っているんだという思いをきちっと語っておられました」。

 榎本和代さん(61)は、「滋さんは好奇心旺盛で、なんでもよくご存じの方でした。あの世代であんなに家族写真を撮影されている方は珍しかったんじゃないかしら」と振り返る。

浮かび上がる当時の様子

 滋さんが撮影した数々の写真を展示してたくさんの人に見てもらったらと提案したのは、同会の森聡美さん(58)だ。滋さんは最初、「こんな普通の家の写真に誰が関心を持つだろうか」と戸惑っていたという。しかし、ニュース映像ではなく、めぐみさんの成長を記録し、日常を切り取った家族写真に、人々は「うちの子にもあんなときがあった」などと親近感を感じ、拉致問題を「ひとごとではない」と身近に感じるきっかけになった。

 滋さんの妻、早紀江さん(84)は以前、「どの写真をみても、その時の様子がくっきり浮かび上がる」と話していた。

 公園の日差し、家族の笑い声…

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