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 東京都新宿区は新型コロナウイルスの影響で苦境に陥るライブハウスや劇場などの文化芸術施設を支援しようと、施設で撮影した映像作品の制作費を助成する。施設のPRやスタッフの雇用創出につなげる狙いもある。

 中小企業や小規模事業者が対象で、演劇やバンド演奏など5分以上の作品を撮影すれば、経費の9割(上限50万円)が助成される。施設側は機材購入費や、人件費、出演謝礼などに充てられる。申請期間は7月6日~9月30日。動画は区が新設するユーチューブチャンネルで8月ごろから無料配信される。施設側も撮影した作品を自由に使える。

 区によると、区内にはライブハウス、劇場、ミニシアターなどの少なくとも計90の文化芸術施設がある。感染予防を呼びかける区にとって、「3密」になりかねない集客活動への支援は難しい。そこで、無観客での映像配信なら、と考えたという。小泉栄一・文化観光課長は「文化芸術の街としての灯火を消さないようにしたい。各施設が配信設備を整え、今後の活動につなげて欲しい」と話す。

 区は10日、関連費3千万円を盛り込んだ補正予算案を区議会に提出した。

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 営業再開しつつある施設もあるが、存続の道を模索する状況はなお続く。

 歌舞伎町にある「新宿シアター・ミラクル」は100席規模の小劇場。「安価で使いやすい舞台」を心がけ、若手の劇団やお笑いイベントに重宝されてきた。しかし3月末からは新型コロナの影響で公演のキャンセルが相次いだ。東京都のロードマップで「ステップ2」に含まれる劇場の休業要請は解除されたが、出演者らの多くは練習ができていないのが実情だ。支配人・池田智哉さん(38)は「7月までは本格再開は難しい」とみる。

 家賃や人件費などの維持経費は月約130万円かかる。4~7月の赤字分は蓄えを崩したほか、国の持続化給付金やクラウドファンディングでかき集めた資金でどうにか補えそうだが、8月以降の見通しはついていないという。池田さんは「人数を絞った公演と並行して、ウェブ配信にも区の助成を活用して取り組みたい」と話す。

 さらに厳しい状況にあるのがライブハウスだ。使用制限の緩和方針がいまだに示されないなか、演者やスタッフと共に生き残る道を模索する施設もある。

 「新宿SAMURAI」(歌舞伎町)は、無観客ライブを配信する演者に、会場レンタル費を無料にする取り組みを始めた。会場を使うには通常10万~20万円ほど必要だが、機材費や人件費にかかる数万円だけで利用できる破格の設定だ。施設自体の収益にはならないが、店長の馬場義也さん(33)は「外注している音響や照明のスタッフに、少しでも仕事と収入を回すことを優先したかった」と話す。「本格再開した時に施設だけが残っていても仕方ない。ライブに関わる人たちと共に生き残るためにできることをしていきたい」(大山稜)