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 富山市内で同居人を殺したとして、ベトナム人技能実習生ゴ・コン・ミン被告(20)=死体遺棄罪で起訴=が殺人容疑で逮捕された事件で、最高裁第二小法廷(菅野(かんの)博之裁判長)は、富山県警の捜査に「重大な違法」があるとして殺人容疑での勾留を認めなかった富山地裁の決定を支持し、検察側の特別抗告を退けた。8日付の決定。

 この事件では今年5月5日、グエン・ヴァン・ドゥックさん(21)の遺体が見つかり、県警は近くのアパートで同居していたミン被告に事情聴取。県警は自宅を調べる必要があるとして、指定したホテルに泊まらせ、翌6日から10日まで5日間、警察署まで送迎しながら取り調べを続けた。調べは1日平均で休憩を含めて10時間半に及び、休憩中やホテルの部屋の前にも捜査員が張り付いた。宿泊費が足りなくなった被告が現金を引き出す際も同行した。

 県警は11日に死体遺棄容疑で逮捕し、27日に殺人容疑で再逮捕。富山地検が勾留を求めたが、富山簡裁が却下し、地裁も支持した。地裁は勾留に必要な「逃亡と証拠隠滅を疑う相当な理由はある」としつつ、常に監視下に置いた捜査は取り調べを拒めるものではなく、「実質的に逮捕に等しい」と指摘。殺人容疑の捜査を目的としたさらなる勾留は認めないとした。

 ミン被告は一方で、起訴された死体遺棄罪をめぐり、裁判官の職権による勾留が続いている。弁護人は異議を申し立てたが、最高裁はあわせて退けた。この勾留は捜査ではなく裁判を受けさせることに目的が限られるため、県警は殺人容疑について任意で調べるとしている。

 ミン被告の弁護人の有沢和毅(たかき)弁護士は「捜査の違法性が重大だと認めたもので、人権保障と将来の違法捜査抑制の見地から高く評価できる」とコメント。しかし、起訴後の勾留に対する異議が棄却されたことには「捜査機関の違法捜査を追認する結果となりかねない」と批判した。

 富山県警と富山地検は「捜査中であり、コメントは差し控える」などとしている。(阿部峻介、竹田和博)

元裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授の話

殺人事件で勾留請求が退けられるのは異例だが、令状主義に沿った勇気あるまっとうな判断だ。それを最高裁も確認した意味は大きい。同じような捜査手法が問題になった40年以上前の事件で、最高裁は、「ホテルに泊まりたい」という容疑者の上申書があることを理由に適法としつつ、取り調べを拒めない状況に置いた捜査の任意性に疑問を突きつけた。こうした捜査がいまだに行われていることに驚く。適正手続きを守ることは捜査の大前提で、身体拘束して取り調べるなら県警は最初から令状を取るべきだった。