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 国連職員は抗議デモに参加してはいけないのか。職員向けの倫理委員会の連絡やグテーレス事務総長の発言を機にそんな議論が巻き起こり、グテーレス氏が9日、釈明する事態に追い込まれた。国連が重視する人権をめぐる話だけに、内部から批判の声が出ていた。

 国連報道官によると、グテーレス氏は4日、職員向けのオンライン会合で、米ミネアポリスでなくなったジョージ・フロイドさんの死を悼み、「多くの同僚がもっと声をあげ、積極的に活動したいと感じているが、私たちには国際公務員としての限界がある」と言及。一方で「私たちにできることが一つある。国連のメッセージを広めることだ」と推奨した。

 この前日には、国連内部の倫理委員会が「国際公務員は争いのある事柄について、私人として自らの信念を公にする自由を持たない」などとする関連規定一覧を職員に送付。「連帯を示す例」として、ソーシャルメディアを使うことが記載されていた。

 ある国連職員は一連の連絡を受け、抗議デモに行く予定をとりやめた。取材に対し、「事務総長の言っていることをリツイートすればいいのか。表現の自由はどこにいったのか。今回の問題は人権を守るか否かの問題だ。沈黙しているならば、人権の守護者とは言えない」と語った。

 集会・結社の自由に関する国連特別報告者のクレモ・ブレ氏(トーゴ出身)も6日、国連の国際人権規約が平和的な集会の権利を認めており、内部規定がそれを覆すことはできないと指摘。「不正義がある状況で中立にいるなら、抑圧する側についたことになる」と厳しく批判した。

 こうした動きを受け、グテーレス氏は9日、職員に書簡を送付。「倫理委の規定は、職員が人種差別に直面しても中立、公平でなくてはならないということでは決してない。完全に私的な立場で連帯を表明することについては禁じられていない」と説明した。(ニューヨーク=藤原学思)