「コロナで…」発注者が納品拒否 泣き寝入りしかない?
コロナ法律相談 回答:小林寛治弁護士
新型コロナウイルスで大きな打撃を受けている、中小企業や個人事業主。悩みやトラブルには、どう対応していけば良いのでしょうか。読者から寄せられた相談などをもとに、弁護士に聞きました。(聞き手・遠藤隆史)
Q 印刷会社経営です。広告会社から受注したチラシを作ったのですが、「新型コロナウイルスの影響で路上配布ができなくなった」として納品を拒否されました。泣き寝入りするしかないですか。
A そんなことはありません。下請法では、検品が不十分で不良品が多すぎるなど下請け側の責任が問われる事情がない限り、親事業者が発注した品物の受け取りを拒否したり、一部だけ受け取ったりすることはできないとされています。
「親」「下請け」の関係は資本規模や取引内容で決まり、広告会社が親事業者であれば下請法違反に当たる可能性があります。広告会社に法律違反だと指摘して製品の受け取りを求めることも可能ですし、公正取引委員会に調査や勧告を要求することもできます。
経済産業省は3月、親事業者に対して、下請け事業者への発注の取り消しなどに「一層の配慮」をするよう要請しました。親事業者の言い分を簡単に認める必要はありません。
広告会社が親事業者にあたらなくても、納品拒否が独占禁止法が定める「優越的地位の乱用」にあたる可能性があり、公取委は広告会社に違反行為をやめるよう命じることができます。
ただ、広告会社の経営が新型コロナで本当に苦しくなっている場合など、納品拒否が一概に不当といえないこともあります。会社の将来を考えれば、取引先との対決姿勢を鮮明にするには慎重な判断が必要です。弁護士に相談するなどして交渉を進めるべきです。
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こばやし・かんじ 2000年弁護士登録。大阪弁護士会の中小企業支援センター事務局長。MBAの学位を持ち、中小企業法務や事業承継問題に取り組む。
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