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断層探訪 米国の足元 第一部③

 グローバル競争にさらされ続けてきたことで、先進国の製造業の基礎体力が高まり、「国内回帰」の素地が整っていた面もある。

 ウィンスロップとサウスカロライナ州ガフニーの「パークデール・ミルズ」を訪れると、産業用ロボットによる省力化が徹底的に進み、清潔な環境で熟練労働者が働いていた。

拡大する写真・図版紡績工場「パークデール・ミルズ」では、自動運転のロボットによる省力化が徹底的に進められていた=3月6日、サウスカロライナ州ガフニー、青山直篤撮影

 パークデールは原綿から糸をつむぐ紡績を担う、全米有数の企業だ。紡績はかつて、戦前日本のルポ「女工哀史」に描かれたような、劣悪な労働環境の犠牲のもとで近代化の原動力となった。しかし、現代の先進国では、人権や環境基準と生産性を両立できない企業は生き残れないのだ。

 ジェリー・ハミルのような農家から運び込まれる原綿は、すべて産地がさかのぼれるようバーコードで管理されている。産地により微妙に特質が異なるため、それを絶妙により合わせ、高品質の糸をつくる。「味わいにむらのないワインをつくるのと全く同じだよ」とウィンスロップは言う。

 パークデール副社長のデービス・ウォーリック(34)は14歳の時、同社の最高経営責任者(CEO)を務める父アンダーソンに連れられ、パキスタン・カラチの繊維工場を訪れた。そこで、先進国の消費者が享受している低価格を支えていた実態を知る。

 「整えられた視察ルートをたまたま外れた時、自分より小さい子どもが働いているのに出会った。まるで王子様をみるかのような目でこっちを見てきたんだ。すさまじい衝撃だった」

拡大する写真・図版紡績工場「パークデール・ミルズ」で、原綿から切り取られたふわふわの綿くず=3月6日、サウスカロライナ州ガフニー、青山直篤撮影

マスク作りも自国回帰

 「パンデミックはサプライチェーンの国内回帰(リショアリング)の死活的重要性を示した」。トランプは5月5日、マスク増産に入った米航空機器大手ハネウェルの工場で宣言した。

 冷戦終結後、世界はグローバル化をひた走り、企業はサプライチェーンの効率化を前提として経済成長を追求してきた。膨大な富が生まれる一方、格差の拡大や地域社会の弱体化は、民主主義を弱めた。新型コロナウイルスがもたらした危機は、時代の転機を告げている。ただ、一国に閉じこもる保護主義も答えにはならない。収縮する市場と、統制色を強める国家とが織りなす「コロナ後」の世界。動揺するサプライチェーンの「断層」で針路を探る人々を訪ね、全5回で報告する。

 過去数十年、激しい国際競争に…

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