第5回自由貿易の陰 ベッカート氏に聞く「綿と戦争資本主義」

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青山直篤 デザイン・米澤章憲
写真・図版
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断層探訪 米国の足元 第一部⑤

 綿花の白い繊維は人々を魅了し、産業革命や世界的な貿易拡大の原動力となった。カロライナなど米南部から欧州、アフリカ、インド、日本――。市場をつなぎ、人と商品、資本が躍動するグローバル資本主義を生み出す一方、奴隷制に端を発した人種差別、戦争、共同体の破壊など負の爪痕も残す。グローバル化が転機を迎えるいま、過去から何を学ぶべきなのか。綿と資本主義の研究で注目されるハーバード大の歴史家、スベン・ベッカート教授に聞いた。

 ――なぜ「綿」にそれほど関心を持ったのですか。

 このふわふわした白い繊維が、グローバル資本主義の歴史のなかで、類を見ない重要な役割を果たしてきたからです。資本主義は人間の歴史のなかで自然に生まれてきた結果のように思われがちですが、決してそうではない。過去500年をみても、その成長の歩みは当初は非常に遅かった。

 しかし、英国や欧州での産業革命の後、19世紀にすさまじい勢いで発達しました。国家が力を強め、綿工業に携わる資本家と緊密に結びついたことが推進力になったのです。海外植民地の拡大も追い風となり、「戦争資本主義」というべきものを生み出しました。

 ――戦争資本主義とは?

 この時期の資本主義は、植民…

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連載断層探訪 米国の足元(全30回)

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