拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

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 前回は、小学1年になった我が子が、昼休みにひとりぼっちでいることについて、心配するリョウさんの話をしました。我が子は、「言うことをきかないと、うるさい友達がいる」と言いますがそれきり黙ってしまいました。夫は「我が子でもその子の人生なのだから、放っておけ」といったスタンスで、しまいには「働けば気が紛れる」とまで言いました。

 リョウさんは、どうしたらいいのでしょう?ひとりぼっちの我が子に対して、何もしてあげられないのでしょうか?

 ここで、一連の流れをリョウさんの娘さんの心情を想像していきましょう。

 娘さんについてわかっているのは以下のことです。

 ・学校である友達が自分のいうことを聞かせようとしてくる

 ・従わないとうるさくいってくる(詳細不明だが、暴力はない)

 ・だからひとりでお絵かきをして過ごしている

 ・浮かない表情で帰宅した

 娘さんとしても現状が「楽しくてたまらない」学校生活というわけではなさそうです。かといって、浮かない表情が、昼休みの過ごし方のせいかどうかはまだわかりません。このあたりの因果関係は謎です。

 私たちだって、苦手な人がいれば、その人から距離をとって、自分なりの過ごし方をすることはあるでしょう。昼休みにひとりで過ごすのは「らしくない」ことかもしれませんが、それが永遠に続くかはわからないし、娘さんなりの対処かもしれません。

 「自分勝手なジャイアンみたいな友達に従うばかりでなく、ちょっと距離を置くという、対処行動のレパートリーを広げることができた」という見方もできそうです。

 実際、社会ではこんなレパートリーも必要ですよね。

 娘さんは今どんな気持ちなのでしょう。

 「あー、なんだか疲れた。つかれたーーーって気持ちを吐き出したい」のか、「愚痴りたい。あの友達についてママと悪口言い合いたい」のか、「学校のことはまだ言葉にわざわざしたくなくって、家ではママに甘えたい」のか。

 その気持ちを受け止めてあげることが先決でしょう。

 受け止めるために、聞いてみるといいのです。

 リョウ「ねえ、今日なんかニコニコじゃないかも。どうした?なんかあった?話したい?」

 話さないかんじなら、

 リョウ「OK. じゃあ、ゆっくりするか?なにしたい?」

 おやつの時間にしてもいいし、一緒にゆたーっとソファに寝転ぶもいいし。お散歩に出かけるでもいいでしょう。

まずは気持ちを受け止めて

 こうして我が子の希望する気持ちの吐き出し作業(言語的にも非言語的にも)が終わって、もし、いつかこんなことを言い出したら、友達とのつきあいについて話してみてもよいでしょう。

 娘「ママのまわりにはさ、いやな人っている?」

 リョウ「いるよ!いるいる!」

 娘「どんな人?」

 リョウ「いっつも自分のやりたい遊びばっかりで、こっちがしたい遊びはダメっていう友達がいたよ」

 娘「それで?どうしたの?」

 リョウ「あっちはいつも“かけっこ”って。ママは“ゴムとび”がしたくてね。だから代わりばんこでやろうって言ったの」

 娘「ほんとにかわりばんこできた?」

 リョウ「全然よ。あっちが3で、こっちが1かな。やな奴っているよねー」

 娘「○ちゃんそっくり」

 リョウ「そうなの?」

 リョウさんは、娘に「こんなふうにつきあうといいよ」と言いたくなるところをぐっとこらえて話しました。「ママはこうしたけどね」という経験談レベルにしておきました。なんとなく娘にはその方が入りやすい気がしたのです。娘さんも、アドバイスよりは気持ちをまず受け止めてほしい、それから、ちょっと参考例を聞きたかった、そんなかんじだったのかもしれません。

 我が子に何か心配なことが起こる前に、親子で日頃からこんなことを話し合っておけるといいなと思って作成した動画があります。

「考え方のクセ」について親子で、予防接種的に学んでおくのです。トラブルが起こる前、つまり、平常時、穏やかな心の時に、親子で見てください。

 できれば、家族みんなで「あーーこれ、パパの考え方の癖だ」とか「これはママね」というかんじで、考え方のクセについてお互いに共有しておくと、いざというときに使えます。いざ、我が子がしょげているときに、もしかすると我が子が「あ、私いつものあの考え方のクセに陥っているのかも」と自分で気づくことができるかもしれません。親子で「もしかして、これってあのクセ?」と振り返ることができるかもしれません。

 ぜひご視聴ください。

◇「子どものための認知行動療法」YouTube動画

https://youtu.be/hv4af33MMec別ウインドウで開きます

 このコラムの筆者、中島がオンラインカウンセリングを実施しています。詳細はこちらから。

https://www.kanameclinic.com/lp/別ウインドウで開きます

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。