拡大する写真・図版N中等部の入学式あいさつで、地域貢献や地方創生への思いを語る、七島海希さん(右の画面内、同校提供)

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 学校に行きづらい小中学生がオンラインで学ぶ「学校」が増えている。文部科学省は、不登校などの場合は在籍校の校長判断で、オンライン学習でも出席扱いとする通知を出しているが、現場ではなかなか浸透しなかった。コロナ禍による長期休校でオンライン学習の模索が広がるなか、動き出した自治体もある。

「本人のモチベーション高める点も」

 「自由に学びを進められるのが魅力です」

 5月23日、オンラインで開かれた角川ドワンゴ学園「N中等部」(沖縄県)の入学式。ネットコース1期生代表としてあいさつした七島海希(みき)さん(13)は、そう意気込む。

 全国7キャンパスある同校の生徒数は、通学コースと合わせて800人を超える。全国約1万5千人(ネットコース約1万2千人含む)が学ぶ「N高校」と同じ学校法人だが、N高と違い、学校教育法1条に定める学校(1条校)ではなく、生徒は地元の公立中などに籍を置いて学ぶ。

 入学者の志望動機は、ゲームを作りたい、仲間と起業したいなど様々だが、「既存の学校に何かしらの違和感を抱いた生徒が多い」と担当者はいう。

 七島さんもその一人だ。小5で内閣府主催の「地方創生☆政策アイデアコンテスト」に出場して、地方創生担当大臣賞を受賞。東北地方の国立大付属中へ進んだが、中1の後半から登校しなくなった。今はオンライン学習で英語、数学、国語を学びながら、プログラミング学習などにも取り組む。大学進学、留学し、世界で貢献することも考えている。

 同校では、希望者の在籍校に月1回、出欠状況や授業の取り組み、本人の振り返りなどを記入した「学習状況等報告書」を送付する。だが、出席や評価の扱いは校長によって様々だ。「本人のモチベーションを高める点でも学習成果を認めてもらえるとうれしいです」と担当者は話す。

文科省も「要件満たせば出席扱い」通知

 文科省は2005年、不登校生が自宅でITで学んだり、学校外で指導を受けたりした場合、一定の要件を満たせば、在籍校の校長判断で出席扱いにできるとの通知を出した。だがなかなか浸透せず、教育機会確保法施行後の18年度になっても16万人超の不登校生に対し、フリースクールなど学校外の指導で出席扱いになった児童生徒は約2万3千人。自宅のIT活用などでの出席扱いは286人だった。昨年10月、復学前提でなくても出席扱いとし、成果を評価に反映できる内容の通知を改めて出した。

 現在はコロナ禍の緊急措置で、感染を恐れて登校しない場合は、出席停止扱いで、欠席にはならない。ただ、通常に戻れば在籍校の校長判断となり、欠席が多ければ、進学などで不利な扱いを受けることも考えられる。

拡大する写真・図版学習内容を「ネットの先生」とオンラインのチャットで相談する利用者のイメージ(クラスジャパン小中学園提供)

 文科省通知の普及を急ぐのが、ネットスクール「クラスジャパン小中学園」(東京都渋谷区)だ。中島武代表(57)は「残念ながら広く知られていない。認知されれば、学びの選択肢が広がるのに」と言う。

 同学園は不登校の子の在籍校と連携しながら在宅学習をサポートし、成績評価や出席認定を受けられる仕組みを提供する。日々の学習内容を子ども本人と「ネットの先生」がチャットで相談、教科書に沿った映像教材などで進める。学校側には進度や成果を記した学習リポートを提出し、内申書の参考にしてもらう。オンライン進路指導のほか、工作やゲームで会員と交流するクラブ活動、ホームルームの場もある。

 2年前に財団法人でサービスを始めた際は、提携自治体に住む子どもしか使えなかった。だが昨年7月に民間ネットスクールとしても開校したことで門戸を拡大。今は全国300校で個別対応を進めている。

 これまでの利用者は延べ約380人だ。学校に戻り退会する子もいるが、現在は約180人の小中学生が在籍する。中学卒業後は通信制を選ぶ子も多いが、今年は全日制高校に進んだ生徒も十数人いるという。

「オンラインの方が向いている子も」

 動き出した自治体もある。熊本市教育委員会は8日、「学校に来られない子の希望者には、授業のライブ配信をする」との通知を市立の全小中学校と特別支援学校に出した。

 同市ではメールで欠席連絡するシステムを利用しており、その際にライブ配信を希望すれば、視聴できるようにする。教室内に定点撮影する端末を置き、ウェブ会議システム「Zoom」などで、欠席者に授業を配信。教師や同級生がノートや黒板を撮影して送信する工夫も求めている。

 同市では今回の休校中、「3人に1台」配備されていたタブレットや家庭の端末を使い、全小中学校でオンライン授業をした。その中で不登校の子が授業に参加したり、教室で発言しない子が活発に発言したりする例が報告され、通知を出す後押しになったという。

拡大する写真・図版クラスジャパン小中学園が月に1度の学習報告書を作成。保護者から在籍校に届けてもらうことで、出席扱いや成績評価につなげる仕組みという=同学園のウェブサイトから

 遠藤洋路教育長は「オンラインの方が向いている子がいることがわかった。これからの学校は、家から、家以外からでも、場所を選ばず学べる環境を整える必要がある」。今後、オンライン中心の小、中学校のカリキュラムを作り、ネットスクール的な専用の教室なども考えたいという。

 クラスジャパン小中学園の教育アドバイザーで、不登校経験者でもある起業家の小幡和輝さん(25)は、「長期休校で多くの人が不登校を疑似体験し、気持ちを想像できるようになったのは良いこと。無理して学校に行かず、家で学ぶことがポジティブな選択肢として広がればいい」と話す。(宮坂麻子、西村悠輔)

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 朝日新聞社は14日午後3時半から、オンラインの無料イベント「学校再開、子どもの心にどう寄り添う? 専門家に聞く」を開きます。長期休校明けにストレスを抱える子どもの心にどう向き合うか。保護者からの疑問や悩みに、精神科医で日本の認知療法の第一人者の大野裕さんと、学校になじめない生徒のための「居場所カフェ」を導入した大阪市立市岡中学校長の西川孝治さんが答えます。参加登録は14日午後3時までに、専用サイト(https://ciy.asahi.com/ciy/11001759別ウインドウで開きます)から。サイトへはQRコードから移行できます。

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