[PR]

 佐渡汽船のジェットフォイル(高速水中翼船、JF)の新造計画が暗礁に乗り上げかかっている。コロナ禍で観光客が激減し、佐渡汽船の航路の利用者も大幅減に。その影響で新造契約時期を延ばしたが、新潟県や佐渡市と協議している資金調達の枠組みも決まらず、先行き不透明だ。

 「支援を含めて県と市にお願いしている。契約時期は決まっていない。年内に契約をさせていただければ」。先月28日、航路の維持などを話し合う県などとの協議会の後、佐渡汽船の尾崎弘明社長はこう述べた。

 主力航路である新潟―両津(佐渡市)に就航しているJF3隻のうち、「ぎんが」は海外で運行されていた期間を含めて使用開始から40年が経ち、更新の目安とされる「35年」を大きく過ぎた。同社は当初、「ぎんが」に代わる新船の建造契約を、製造する川崎重工(神戸市)と5月末までに結ぶ予定だったが、コロナ禍で状況が一変した。大型連休を含む5月の全体の利用客は前年同期比で86%減、1~5月でも同56%減だ。経営責任をとり、社長らは役員報酬を1年間、減額している。

 利用客が大きく減ったからといって、ただちに「全便運休」には踏み切れない。本土と佐渡島を結ぶ定期航空路はなく、佐渡汽船の航路が唯一の定期交通機関だからだ。コロナ禍で利用客が激減して以降も減便しながら運航を続けたため、燃料費などがかさんだという。

 同社は手元資金の確保へ銀行と交渉を続けている。5月12日に公表予定だった1~3月期の決算は、コロナ禍で人繰りがつかないことなどを理由に延期している。同社の担当者は「資金調達の問題も抱え、(JF新造の)契約締結に人が割けない」と説明する。

 そもそも、約34億円と見込む新船建造費の負担方法も固まっていない。

 佐渡汽船だけでは全額を賄いきれない。同社の4割弱の株を持ち筆頭株主の県は、費用の70%を独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構から借りたうえで、県と佐渡市が各10%を、佐渡汽船が残りをそれぞれ負担――という枠組みを提案した。

 しかし、佐渡市は計画に合意していない。県は「JF更新の必要性を認識している。市にも理解を求めている」(県幹部)との姿勢で、市の判断待ちだ。

 佐渡汽船は、運航中だった「ぎんが」が日本海で海洋生物と衝突し、多数の乗客が負傷した昨年の事故の影響もあり、2019年12月期決算は最終的なもうけを示す純損益で7億円の赤字。新船建設にコロナ禍が重なった同社を支えるため、県は、国会で可決された国の第2次補正予算を活用する方向で検討している。計上されている臨時交付金を地方交通の維持に活用する方針だという。

 佐渡汽船のもう一つの航路、直江津(上越市)―小木(佐渡市)は、利用者が少ないが採算を度外視して維持している。生活のための航路を、民間企業の理屈で削減することはできない事情がある。県は「乗客が減るなか、佐渡汽船は休まず運航してコストがかさみ、経営へダメージを受けた。報いないといけない」(県幹部)として、経営を支援する考えだ。

     ◇

 JFは、他県でも離島航路に用いられている。しかし、運航会社の多くは経営が芳しくなく、修理や点検を重ねて使い続けている。

 メーカーの川崎重工は1989年からJF15隻を建造したが、その後は受注のない状態が続いた。東京―伊豆諸島の航路を運航する東海汽船(東京)から受注し、今年、新船を25年ぶりに建造した。

 川重は、25年以上前に建造に携わったベテランやOBの力を借り、製造ノウハウを社内で継承しているという。継続して受注がなければ、技術の継承も難しくなる。

 佐渡航路は、カーフェリーだと新潟―両津が2時間半かかるのに比べ、JFは1時間ほどで結び、利便性は高い。世界文化遺産の登録をめざす佐渡金銀山遺跡など島にとって観光は経済活性化に欠かすことができず、JFは重要だ。

 ただ、今年5月には、JF「すいせい」が両津出港直後にタービンの回転検出器の不具合で引き返すトラブルもあった。「ぎんが」の更新が順調に進まなければ、利用者の不安が増すことになる。(長橋亮文)

     ◇

 〈ジェットフォイル(JF)〉 米航空機大手ボーイングが開発した。日本は離島が多いため高速船の需要を見込んだ川崎重工が1987年に製造・販売権を引き継ぎ、世界で唯一、製造技術をもつ。JFは船底から伸びた翼で船体を海面から持ちあげて航走する。波の影響を受けにくく、時速約80キロで航走可能という。