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 裁判員裁判で、遺体や傷口の写真といった生々しい「刺激証拠」の代わりに、裁判員の心理的負担を減らそうとイラストで立証する手法が定着してきた。検察や被害者側からは「犯行状況などを正確に知ってもらうため、リアルな被害を見てほしい」との声もあがる。裁判員に配慮しつつ、どう公正な裁判を実現するのか。模索が続く。(多鹿ちなみ、細見卓司、米田優人)

最小限の加工で

 年間100件程度の裁判員裁判を扱う大阪地検。刺激証拠のイラスト化は、法廷に出される資料の作成などにあたる公判支援室の検察事務官が担当する。

 朝日新聞は今年2月、大阪地検の許可を得て、同室の検察事務官高橋加奈さん(45)=4月に別部署に異動=にイラスト作成を依頼。傷口を模した市販のシールを記者の手首に貼り、その写真を高橋さんにイラスト化してもらった。

 高橋さんは写真の上にトレーシングペーパーを重ね、肉眼のまま鉛筆で傷の縁を数ミリずつ描き進め、ぱっくりと開いた傷口を丁寧に描き上げた。一方、傷口周辺の赤黒い内出血は描かなかった。「切り傷の様子をより明確にするため」という。

 高橋さんが公判支援室に配属されたのは2018年4月。美術を専門的に学んだ経験はなく、以前は検察官の捜査支援などを担当した。検察官の立証方針に沿うように、検察官と相談しながら写真の色彩を変えたりイラスト化したり。「色を実際より薄くすると傷の深さが分からなくなるなど、加工すれば情報量が落ちる。被害がひどいほど加工しないといけないジレンマに日々悩んでいます」と打ち明けた。

 包丁の刺し傷を人体図に赤い直線だけで示さなければならなかったこともあり、「これほど加工するのか」と驚いたという。

 公判に参加する遺族の「自分の家族がどんな目に遭ったか、裁判員に写真を見てほしい」との思いに応えられず、悔しい思いもした。「裁判員裁判は被害が重大なものも多く、ケガの様子は重要。本当はそのものを見て欲しい。最小限の加工ですませたい」と話す。

裁判員への配慮と正確な判断

 裁判員裁判が導入された09年当時から、刺激証拠を裁判員にどう見せるかは課題だったが、写真はほぼそのまま使われた。ある「事件」をきっかけに、刺激証拠の取り扱いは法曹関係者の間でより重要なテーマとなった。

 遺体写真などを見たことが原因…

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